12.13
羨ましいおふたりなのでありました。
時が溶けてしまうよーな、夢の二分の一の一体感を、いま、このふたりは共有しているのでありましょー。
恋とは、じつに麻薬でございます。
奇跡としか思えない偶然がいくつか重なるのも、恋の特徴でございます。
「もしも、あの時…」
きっと、ふたりは出会いの交錯に至るまでの奇跡の数々を語り合っては、運命というものの存在を賛美しているのです。
たとえ、それが苦しみのはじまりだとしても、恋という名の毒杯を飲み干さずにはいられないのであります。星々は自分たちのために瞬き、朝よ来ないでと祈っているに違いありません。
50年後…。
すぐに歳月の経過を考えてしまうのは、私メがそうとうに老いてしまっているからに他ありません。
ふたりが別れても、一緒になったとしても、歳月という悪魔ははむごく忍び寄るのでございます。
皺ぶいた瞼の奥にしずんだ瞳の光に、まだ若さの残光がわずかに仄んでいたとしても。
前の座席で熱い情熱の気体に包まれているふたりを盗み見しながら、私メも目を閉じて、過ぎ去った自分の影を追うのでありました。けれど、追想は途切れ、或る一瞬を切り取った風景しか蘇らないのであります。
恥ずかしながら、
「もう一度…」
せつない苦しみを、あの苦しいけれど甘い痛みをともなう熱い気体を胸に詰まらせたい。
そして軽蔑されたい。叱られたい。傷つけられたい。
そのたびに、ごめん、ごめんなさいと背中を丸めたい。
けれど、もはや心の皮膚は分厚く、カッターナイフで傷つけても血すらながれません。
お女性を見た瞬間に、どのよーに発展し、どのよーに終結してしまうのか見えてしまうのであります。
老いのためか、占いの弊害なのか。
しょせん、求めているのは、愛とか恋ではなく、若かった自分自身に会いたいだけなのでありますです。
前のふたりよ、どーぞ永遠に。
36歳で、自然と死ねるような人間に産まれてくれば良かったと、
老い始めた自分の姿に絶望を感じます。
わたしも、若い頃の自分に会いたいです。
●十傳より→老いはホラーですね。
ホラーと言うよりも正直に残酷でございます。
死に至る前に呆けるのは神の恩寵でしょう。
それが叶わないならよほど図太く老いを直視するしかございません。
●十傳より→私メはお女性どもの肉に温められるのが老後の夢であります。
>しょせん、求めているのは、愛とか恋ではなく、若かった自分自身に会いたいだけなのでありますです。
これ凄くわかります…
でも先生よりひと回り年配の俳優さんが、再婚で幸せゲットしたそうです。
今朝のニュースなんですが、年齢関係なく出会う相手次第なんだと思います。
URL欄にリンク貼りましたので、もし良かったら読んでくださいね。
●十傳より→スミマセン。他人のリンクはしないことにしているのです。