2018
07.23
07.23
ユリは亡父の好きなお花でしたから、私メは自動的に避けておりますです。
今年は亡父の13回忌をしなくてはなりませぬ。モリオカの会場の予約は終わっており、あとは苦手に親族にお知らせの手紙を出すだけ。
オノ家の奴らは役に立たないのにもかかわらず長生きなので困るのでございます。
その昔、銀座のママと付き合っていた頃、お店に飾るカサブランカの買い物に付き合ったことがございました。
「その花は嫌いだな」
「好きなものなんてないじゃない、センセに」
彼女の運転する後部座席に積んだ百合の女王さまの匂いが苦しいのでございました。
「わたしは好きよ」
苦しい花の匂いの向こう側に父親の存在があったのかもしれません。そして叔父だの叔母だのの存在がなびいてきたのでしょーか。
「どうするの、これから」
と誘われても、いつものコースをこなすには欲情が満ちてこないのでありました。さっさと車を降りたい気持ちの方が強いのでありました。
おセックスをするのも、そのあとにバスルームでヘチマで身体を洗われるのも、考えただけでうんざり。なんとヘチマを車に用意しているお女性でありました。
その上、彼女は、信号が赤になるたびにフランス人のような表情をしてキスを求めるのであります。
「花のせいだよ」
ふーん、と彼女。
信号よ青になれ、赤にはなるなよ。
ユリの雄しべの赤い色も恐怖でありました。
しばらくしてママとは切れ、
「どーしてなの」
と店の女の子やその他の奴らに首を傾げられましたが、自分でも今もって謎なのであります。
それほどまでに父をうっとうしく思っていたからかもしれませんです。