小野十傳オフィシャルサイト

雪が降ると、雪の中を歩きたくなります。
若い頃とくらべると、その誘惑はずいぶんと軽減しましたが、でもやはり、街灯の光の中で小止みなく降る雪が呼んでいる気がするのでございます。

雪に包まれて悲しくなりたいのでございます。
切なくなりたいのでございます。
失われた何処かに帰りたくなるのであります。

できることなら降りしきる雪に閉じ込められながら生き果てたくもなるのでございます。

今回のモリオカは、とても忙しく、老母の肥料づくりも容易ではございませんでした。
雪かきから始まり、特別講義に神経をすり減らし、それでも雪を見ていると変な元気がしたたり落ちるのであります。
歩きながら、
「自分に残されたやりたいことは、あと二つか三つしかないのだなぁ」
ふと気づいたのであります。
靴の底で雪のつぶれる音がいたします。
街は廃墟のように静まり返り、信号だけが規則正しく色をかえるのでした。

会いたい人は、と自問し、
「いない」
食いたいものは、
「なにもない」
思い残すことは、「それもない」

空虚な満足感が心に広がっていくのでございます。

ぷくぷくと放屁をしつつ歩く、この自由さよ。
歩き歩き歩き、そこで足を止めましたです。

そこから先は禁断の街角なのでございます。
しかし、私メの化身は、私メを置き去りにして、食堂街の一角へと背中を向けて歩き出しているのでありました。
私メは私メの雪にかすんでいく後姿を見送るのでした。

横町の二つ目の角を折れることを知っております。
すると、そこにガラス戸の引手が雪をかぶっていることでございましょう。
湿った赤い暖簾が風に揺れているかもしれません。
揺れた拍子に、油で汚れたガラス窓の中がのぞけるでしょう。
戸を開くとラーメンの匂いの湯気が眼鏡のレンズを曇らせるのでありましょー。
眼鏡をはずした幻の私メは、そこで働く、そこで働く、そこで働く、そこで働いている、
ジェンダーの蘭丸さまを発見するのでございます。

魂の抜け殻の私メは、枯木のよーに深く雪をかぶったまま立ち尽くしているのでございました。

イブですけれど、メリークリスマスざんす。
2022年も、この日を迎えましたですね。

当日よりも、前日が楽しいというのはどーいうものでしょーか。
大晦日なんて、みんな張り切っているのに、翌日の元日になると、とたんに気だるくなってしまいますね。
祇園祭りは前日どこか、宵宵宵山とかいって相当前からウキウキですね。

たぶん、夢に酔えるのでしょー。
当日になると、それが夢だと知ってしまうのでしょー。

悪い女、悪い男に騙されていると気付きつつも、騙されることを楽しんでいるみたい。

しやわせもきっと同じです。

だからイブは思い切り夢を見て良いのであります。
孤独なイブだったとしても、すこし街を歩いたらどーでしょうか。
「耶蘇教だ」とか言わずに、「聖書には日本のことなどひと言も書いてないぞ」とグレないで、今日はおとなしく騙されればイイのであります。

サンタが嘘だと知るまでの幼子のよーにです。
だって、幼い時はいまよりは、しやわせだったのでは？

私メも、特別セミナーが終わったら、モリオカのホワイト・クリスマスに賑わう繁華街をブラつこうかと。
ケーキとかチキンを買って。
「おもしぇ、おもしぇ、おもしぇ！」
吐き出すよーに念仏してもイイなぁ。

おもしぇ、って？
面白い、楽しいなぁ、ということですよ。
しやわせの呪い言葉かもしれませんぜ。

明日は、十傳セミナー。
四柱推命開錠禄外伝「数理術」の初日なのでございます。
それもイン・モリオカ。
いろいろと手落ちをしているよーな強迫観念にかられておりますです。

緊張は、でも、いつものことでございます。
講義の30分前からソワソワして、いきなりの睡魔に襲われたりするのであります。

エロ動画をながめて気持ちを落ち着かせたくもなるのであります。

聞いた話ですが、俳優の松方弘樹が舞台の当日に緊張でガタガタ震えるのを止めるために、清川虹子のオッパイを吸わせてもらったとか。反対のオッパイは山城新伍がガブリついていたとか。
で、で、でも、そ、それからですね、お女性の受講生の皆様はオッパイをさらけだして癒そーとしなくてもイイのでありますですよ。講義がスタートすれば流れに乗れるのでありますから、ちゃんと、私メは。

今日はいちにちドキドキしたり、イライラしたりするはずであります。
「朝鮮人！」
と怒鳴ったりしたりして。
アブナイ、危ない、反対にヤラれることでありましょー。

心静かに便所掃除をすることにいたします。
そしてホットウィスキーを飲んで早寝。

…オッパイ、だれか吸わせてくんねぇか。
いかん、いかん、いかん。