12.20
福本銭の存在を嗅ぎつけた大阪のテレビが「ぜひに!」というものですから、出演することにし、撮影現場である北千住に赴いたのでありました。
この街は20年ぶりであります。
なんという変貌でありましょうか。
まるで洗練された大都会。
私メの記憶する北千住ではございませんでした。
が、記憶を頼りに、線路沿いにあったはずの怪しげな地帯へと入りこんだのでございます。
テレビの約束時間まで、あと30分。
肉地獄の一帯は、おお健在でありました。
昭和の臭いの充満する一帯。
不幸せを背中に張り付けたような昭和の美女は、まだいそうであります。
チンピラさんも。窓の奥から私メを睨んでおりますです。
ぞくぞくするではありませぬか。
しかし、テレビであります。
喫茶店を借り切っての撮影。
怪しいセールスマンということで、芸人どもに福本銭を売るという設定。
むろん、私だけではありませぬ。
髪が生えるという「これは科学だ!」と主張する大阪のオヤジや、隕石を売る爺さん。
私メの出番は最後でありまして、彼らが売れずに戻ってくるのを待ちうけては「ありゃぁ、インチキなヤツらだ」と捨て台詞を受け止めることになったのであります。
「テレビってそういうものでしょう」
「いゆや、お笑い芸人だかなんだか知らないが、人をコケにしやがって、ぶっ殺してやりたいよ」
「殺せばいいんですよ」
「いやぁ」
なんて言うように、時間つぶしも大変でありました。
しかし、お金を出さずに、福本銭を宣伝してくれるのですから、こんなイイお話はございません。
売れそうもない小娘や、旬の過ぎた芸人の面白くもないギャグを聞き流しつつ、「まずまず」という感じでヤレばいいのであります。
しかし、疲れました。
テレビ撮影のあとは妙な興奮がのこります。
けっして良い興奮ではありません。
オッパイがほしくなる高揚感でありましょう。
が、おとなしく、東海道線で缶チュウハイを飲みつつ帰路につくのでありました。