2018
09.16

9月の乱は、ギャンブル宝典終焉の件でございました。

私メが監修していた雑誌なのであります。

当初、太田出版から「ギャンブル大帝」として刊行しておりましたが、他の出版社の同じ、占いで当てる「一攫千金」という雑誌の罠にはまり、社会的な事件に発展したことは、もう誰も覚えてはおりますまい。風説の流布ということで、当時の監修者が降りた、その事件を私メは飲み屋で耳にし、「バカな、ギャンブルの監修など易者にとってマイナスにしかなるまいに…」と大笑いしていたことを、昨日のことように記憶しておりますです。

が、私メは同時に、もっと以前の、やはり或る事件を思い出しておりました。
学生時代に住み込みでバイトしていた旅館に、吉田のおっちゃんなる、占いを特技とする老人がいたのでありました。
「オノはん、ハイセーコーは来まへんで」
と占いで、競馬を読み解く達人で、その老人の言う通りに買って、かなり儲けさせてもらったのであります。
が、その老人は殺人者で、奥さんを出刃包丁で殺害し、逃亡中の身であったのでありました。
ある早朝に、警察が旅館に踏み込んでまいりましたが、吉田のおっちゃんはも抜けの殻。
キチンと畳まれた布団を前に、「占いで逃げたのか」と激しく感動したものであります。

時を超え、その監修にと紹介されたのは不思議でございました。
「バカ易者になってみるか」
名を「ギャンブル宝典」と変え、やがて太田出版から独立したのが1998年ではなかったかと指を折るのであります。

当時は20代の編集者も、すでに50歳の坂をゆうに超えております。

ギャンブル宝典廃刊は、時の流れでありましょう。
やるべきことはやり終えた清々しい気分さえいたします。

ひとつの時代を終え、次の時代という海に、漕ぎ出す老兵が私メであります。