2020
11.18

白菜の漬物が成功いたしましたです。

10月にモリオカに戻ったとき、産直で白菜が安く売ってましたので、
「挑戦しようか」
生まれて初めてというのは、この年齢になってからは、あまりない事ですが、ダメ元なのだからと自分をけしかけましたです。

漬物の元は使わないことを課しました。

「あんや、昔の味だぁーん」
と老母。

やや乳酸が強く、口の中で妙に下の裏に絡むのであります。
味噌の焼きおにぎりを付しましたです。

「あーん、オノさんのモリオカパワー……!」
かつてお女性に指摘されたことがございました。
「モリオカ帰りのオノさんは異常性欲」

以前は、自宅で漬物だけでなく葡萄酒まで作っておりましたです。葡萄の木がございまして秋になると無数の紫色の乳首を実らせ、それを乳腺のあたりで摘み取り、樽にためて発酵させるのであります。
一か月もすると樽の中で汚くぶつぶつと発酵が進むのでございます。

もっとも味噌だけはいまも作り続けておりますですが。

一年でもサボると、樽が乾燥してダメになり、いつしか葡萄酒も漬物もしなくなりましたです。

それが家を建てるために納屋を片付けている時に、漬物樽が出てきまして、なぜか捨てられずに、新しい納屋の奥の棚に置いていたのでありました。
「昔の味」とは、つまり、かつてのオノ家のお味なのであります。

緑茶と塩加減がマッチしまして、
「開運おごご」
と名付けましたです。
「おごご」とは「お香のモノ」のナマリでございます。

これから、追加の白菜を投入するために産直巡りをしようかと考えておりますです。

一人、納屋の裏の水場で、漬物をセットしていると、枯れ風が死人の声みたいに感じられ、
「そこに来ているな」
霊魂を感じるのでありました。

帰ってきたのかもしれませんです。漬物樽の中に亡霊が潜んでいるのかもしれません。

醗酵した漬物をキッチンに運んだ時、かつての亡霊までもが、いっしょについて来たような気配まで感じられたのでありました。