2023
05.17

数日前に行ってみた廃屋が、どーも気になり、ふたたび訪れることに致しましたです。

すると、戸がわずかに開いているではありませんか。
前回は、ガラス戸の奥に得体のしれぬ鬼火の「気」に腰を抜かして退散しましたが、どーやら持ち主が来て、部屋のただならぬ「濁った気」を感じて、空気を流すために戸を開けていったのでしょー。

あるいはならず者が中にはいり、いかがわしいことでも始めたところ、ふと背後に生ぬるい妖気を覚え、悲鳴を上げて立ち去ったのか。慌てて戸を完全に閉め忘れたとも考えられます。

鬼火の妖気が失われてしまうと、廃屋の魅力もまた低下してしまったよーに感じられたのであります。

モリオカの実家を反射的に考えてしまいました。
どの部屋にも妖しい気配が、夏の真昼でさえも感じられておりました。
嘘かまことか、真昼間に、叔母たち数人とスイカを食べていた時のこと、その叔母が、
「誰かいる」
と外を指さすのです。中庭にはさんさんと陽光がまばゆく降り注いでいるばかり。
が、しばらくすると「ほら」と。
白い服を着た男が、茶の間をのぞき込み、視線を上げると身を反らして戸袋に隠れるというのです。

しばらくして、貸家に住んでいて行方不明だった男の住人が、岩手山で死体となって発見されたという報告がありましたです。

またある時は、家族で町に出かけるとき、妹が振り返りますと、屋敷の2階のガラス窓の奥から、見知らぬ女の子が私たちを見下ろしていたということも。

さらに、これは日が沈んでからのことですが、風呂に入っていた叔母が、「やんた、やんた」と素っ裸のまま首のあたりをかきむしり飛び出してきたのです。聞くと、湯船につかっていましたら、獣のしっぽのよーなイガイガが首に巻き付いたというのでありました。

茅ケ崎の、この廃屋の周辺を探ってみました。
2階の屋根は蔦でおおわれております。一階の窓も墨で塗りつぶされたよーに真っ黒でございます。
樹木だけが生気を吸い取って夏空に葉を茂らせておりました。

もしも、ここの新しく家を建てるならば、家を撤去し整地しただけではダメでしょー。
神主に形だけの地鎮祭をたのんでも効果はありますまい。
眼鏡をかけ、ダイバーズウオッチをした神主ではやくにたちません。
だいたいにして、神社に詣でるときは眼鏡をはずすのは常識。

私メのノートに鎮魂のさまざまな技法が記されておりますが、ただ「気」をゼろにしてもいけないのであります。

ここは20年間は祟られることになるであろーと指を折って計算したのでございました。
買い手がいたら、そのお方はよほどの業深き因縁のあるお方なのだろーと、アーメンと祈った次第でありました。