2023
05.12

化け物屋敷があるというので、自転車で訪ねてみました。

その一画は、身寄りのない老人とかがボロ屋に居座っている、いわば死を待つ町なのであります。
墓入りの待機場所といえばイイのでありましょーか。
たしかに背後の無人とみえるアパートの一室だけが、窓が開き、老婆が顔を出し、うつろに虚空をながめているのでありました。

さて、化け物屋敷。
赤子の泣き声が、なかから聞こえてくるというのであります。
おそらく、その泣き声は発情期をむかえた猫のモノに違いなく、尾ひれをつけて面白おかしく物語となっているのに相違はありません。

幽霊というものは、そんなドラマチックではないのでありますから。

門が美しく朽ち果てているのが趣深いのでした。
何人が、この門をくぐり訪ねたのでしょうか。
またこの門を、文字通り門出として希望に燃え、息子や娘が人生の第一歩を踏み出したこともあったでしょう。

持ち主は死んだか、介護施設にはいり、いまはご覧のとおり空き家。
希望に燃えて門出た息子も娘も、人生の蹉跌にハマリ、空き家をどうすべくもなく、訊かれると、ただ耳を塞いで、
「うるさい、うるさい、言わないで、実家のことは」
と急に怒り出しているのでしょうか。

鬼火が感じられるのであります。
ガラス戸の奥に、二つの鬼火のけはいが。

ふいに、軽い吐き気をもよおしまして、本日はいちじ退くことにいたしました。
日を改めて、もう一度、と。