2012
04.05

桜の花が音をたてて咲いているのであります。
そんなに急いで咲かなくても…と思うのですが、春に目覚めてしまったのでしょうか。
咲くことばかりを目指しているようであります。

花見とおなじように、恋もまた酷いタイミングがあるようでありますです。
街を歩いていてズキンと胸に突き刺さるほどの美少女を見かけたときなど、ああ、同じ年輩でなくてよかったと胸をなでおろすのであります。

あまりの美貌のお女性は男にとっても害毒なのでありますです。
新しくお女性が登場しても、頭のなかで比べてしまうのであります。
「この女と恋をして、はたしてあの彼女のことを忘れられるだろうか」と。

「なに考えているの?」
と男がぼんやりと思索に耽っているときの多くは、元カノを追慕して、比較しているものであります。

命が二つあれば、その一つは、あのお女性に捧げたいものだと、おバカなことを思ったりもいたしますです。

美女の名残りの老婆と出会ったときは、それは楽しいモノであります。
過去の男性体験などを聞く悦びにひたれますから。
「若くに出会えないで残念でした」
といいながら、老美人と仲良く会話するのは、ちょっと贅沢な気分であります。

「ではオノさん?」と老美人は語尾を上げて、艶めくようにいうのであります。
「こんど生まれたら、オノさんのお歳に合わせましょうか」
「ぜひに。恋愛しましょう」

老美人は「わたし、好きになったら怖いですよ」などと、私メを試すように睨むのであります。

そう考えると来世というのも悪くありませぬ。

しかし、たぶん、老美人の来世と私メの来世が合うかどうか。

今度は、私メが先に生まれ、彼女を待っていても現れず、ジジイになって死に際に、生まれたての彼女が母親に抱かれ、病院の廊下ですれちがったりするかもしれませぬ。

男女の出逢いのチャンスというものは、じっさいは奇跡的なことかもしれませぬ。
視線があった瞬間に「この人と恋をするだろう」と直感するなんて、一生に一度か二度。

ほとんどは「まぁ、このくらいの程度で妥協しないといけないんだろうな」という感じでありましょう。
そうして、春の花を眺めつつ「あの人の住む地方では、まだ花は咲かないのだろうか」とつかのまの瞑想にひたるのでありましょう。

振り向くと「前世で約束しましたよね」とヘンなヤツが笑っていたりして…不気味でありますですね。

  1. そうそう。桜は音を立てて咲き、音を立てて散るんですよねぇ。

    初めて10コ以上も年上の男性を好きになって、最初に会ったとき、
    「間に合ってよかったー」って思ってしまいました。
    もっと他にかわいいこととか、思うべきことがあるだろうと考えるのですが、でもやっぱり、いろえろ総合して、「間に合った」って。

    まずは同じ時を生きていなければ会えないわけですものね。

    ●十傳より→しず心なく花の散るらむ、でありますです。なぜ気ぜわしく咲き、そして散るのでありましょうか。男はさておき、お女性は…。無常でありますですね。

    • 無常と言ってしまえばそれまで。
      散るから美しいのでしょう?
      期限付きの愉しみだから。ですよね?

      ぼんやりしていられません。
      我が身よにふるながめせしまにならないように。

      ●十傳より→うふふって感じですよね。