2016
10.12

いまだに、かような携帯を使用しております。
格別、不便でもなく、また色々な人とつながりを持ちたくないので、これで十分。

メールも最近はほとんど使わないのであります。

この携帯に電話がございました。事務所からの転送であります。

「○○でがんす」
一発で分かりました。

高校で非常にお世話になった担任教員からでございました。
私メは、学校関係には死亡届を出しておりますから、そういうところから連絡があるわけがないはずでありました。

どこで電話番号を知れ得たかと尋ねるのも愚かしいので、はぁはぁとお相手いたしましたです。
元教員もかなりボケが来ているよーでして、話の辻褄が合わないところがございましたが、それはそれで私メにはどーでもよいこと。

「ではモリオカに戻りましたら、クラスメイトがやっている店がございます。電話で赤紙を出しますからお会いしましょう。死神が来る前に」
と、納めの言葉にも、ほわーん半分ボケ返事でシャレが分からなかったみたいであります。

電話を切ってから、
「死ぬのでアローか」
とか思いました。
私メになつかしいと電話をする人は、死ぬ確率が高いのであります。

それはそれとして、しばらくの間、かつての郷里の秋の匂いに包まれた感じでございました。

不意に…
「オレと逃げよう、いっしょに!」
自分の声もリフレーンしてオショシくて耳を塞いだのでございました。

「あやまずも成長の一過程だべよ、オノ君、期待してっからな」
もと教員は、私メにそういい、他校のオズベさんと、盗んだ車で東京に行き、事故を起こした17歳の私メに、救いの手を差し伸べてくれたのでありました。
それもこれも嘘のような過去であります。

じっと携帯を見つめておるのであります。