2019
07.23

モリオカの実家の納屋をぶっ壊し、仕事部屋を作ったのでありましたが、昨夜から、透明な温度のあるカタマリの存在に気付いたのでありました。

「戻って来たな」
姿のない実体に語りかけました。

納屋のガラクタ…たとえば女の子が横切る姿が映るという一面鏡や、祖母の入れ歯や、古い食器や、履物などをゴミに出したので、いっしょに霊魂も逃げてしまったかと思っていました。

しかし、どーやらそうではなかったよーでございます。

深夜、照明がまばたきしたかと思ったら、風鎮とよぶのでしょーか、掛け軸のおもりが、風もないのに、壁をコツーンと打つのであります。そして、またしばらくしてコツーン。

その直後に姿のない暖かな塊が、背中を、まるで巨乳のネェちゃんがこするように過ぎるのを感じたのでございます。

おお、とても嬉しい気持ちに近いーー安心感でもない、懐かしさでもない、幼児が巨木の梢をみつめているみたいな素直な大切な純粋なおももちなのであります。

老母に言うと、腰を抜かすので、黙っておりましたが、あきらかに新築に魂を迎えたな、と確信したのであります。

じつは、この離れには、老母にも隠している小部屋がございます。
そこに石を祀り、お水を捧げてきたところであります。
「また、草履を脱ぐような音を立てて教えてちょーだい。階段をのぼる音でもイイですし」

いつか、私メが死んでずっとしてから、またこの屋敷を解体する時があったとしたら、この秘密の小部屋を発見するだろうし、発見した者は驚くであろーなと、代々伝わって来た石を撫でるのでありました。

すると、
あの透明な温度が手のひらに感じられたのでありました。