08.25
流派にこだわらず、南東は家相上、幸運を呼ぶためには、きわめて重要な方位なのであります。
敷地に、キングサイズのベッドほどの大きさの岩を設置いたしました。
もちろん設置する日にちを計算して算出し、岩の下には特別の造作物を埋めておりますです。
すでに住居している場合は、危険と隣り合わせでありますから、岩の設置は、
「アパートから引っ越す前でないと、お母ちゃん、死ぬことになるよ」
脅しが効いたのか、新居への引っ越しは一か月ほど遅らせてもらったのでございます。
岩の種類も重要でありまして、山の中から掘り出したものであること、そして胡麻塩模様などの岩は避けることなど、いろいろと条件がございます。
さて、奇門遁甲の講義で、
「いかに吉方位でも、地面に穴をあけたりすることは凶作用の方が強いのです」
とたびたび述べてまいりました。
岩だけでなく、家を建て替えるとき、土台を整備いたしますが、それがご近所にとって大いなる凶現象となって出るのであります。
二月、斜め向かいの40年間引きこもりの先輩が死にました。
三月、やはり斜め向かいの病気療養中の先輩が死にました。
五月、向かいの松井さんが大腸がんで大手術を受けました。
六月、隣の小母さんが突然死なさいました。
この巨石を入れただけでは心もとなく、さらにその向こうの敷地の南東の際に、砦としての岩を配置したのであります。
すると今朝、向かいの老人が倒れ、病院に搬送されたのでございます。
そのご老人は、はげしく合理的な考えの持ち主でして、たとえば墓への供花を、「生花は無駄だから」という理由で、造花を備えたりするお方でございます。
南東の反対側は北西。主人の位置する包囲。そこに、たとえ道路を挟んでいるとは言え、巨岩を運び入れたのでありますから、
「無事ではすまない。なにかあるだろう」
占い観察日記にこまかくメモしていたのでございますが、
「やはり…」
この世には、合理的なことでは図れない謎が存在するのであります。
占いが仮説の分野ならば、科学も仮説。
「倒れました!」
の報せを、顔の右半分は心配顔。左半分は「さもあろう」の満足な笑みを浮かべていたのでありました。