2023
05.19

1998年、私メは東北沢の1Kの部屋を借り、原稿の作成に没頭しておりました。
単行本や雑誌の依頼が舞い込み始めていた頃で、睡眠時間は3時間という多忙さでこざいました。
収入はそれほど多くはなく、家賃8万円がすこし重たかったのです。

深夜に仕事終えると、ちかくの居酒屋で一杯やるという日々でございました。
部屋に戻ってしばらくすると、渋谷の飲み屋で働いているホステスさんが数人で押しかけ、そこから宴会ということも懐かしい思い出であります。

東北沢と聞くと、反射的に記憶から音を立てて浮かび上がる出来事がございます。
5月のある夜、部屋のほとんど向かいにあるマンションの7階から、或る女優さんが飛び降り自殺するという出来事があったのであります。

翌日、出版社からの連絡で知りました。その女優さんというのは、近々に、私メと対談形式の占いが企画されている相手だったのでございます。
なかなかエロっぽい女優さんで、私メはけっこうドキドキと期待していたのでございました。

25年が経過し、存命していれば、女優さんも60近い年齢。人間の錆のでてくるお年頃。
となると、生きていたほうが良かったのか、夭折して、むしろ良かったのか分かりませんです。

で、彼女の主演した映画のビデオを見てみました。
「どこが良かったのか…」
四半世紀のうちに、私メのお女性に対する好みが変わったのかもしれません。

すこしまえに東北沢近辺に立ち寄りました。
もう、すっかり変貌しておりまして、借りていたマンションすらどこにあつたのか分かりませんでした。
飲み屋も道路の拡張工事で消えておりました。
ホステスさんたちとお酒を買い出しに行ったコンビニはございましたが、
「ほんとうにここだったのか」
まったく嘘のよーなのでした。

四半世紀。私メにとっては一瞬間なのでございます。

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