2012
11.22
カメ子は完全に食欲がなくなり、焦ったように動き回っておりました。
冬眠場所を探していたのでございます。
一階のトイレの奥の隅っこに、冬眠用の水槽に水を張り、そこに静かに移したのでした。
段ボールで光を塞ぎ、さらに毛布をかけました。
まだしばらくはゴトゴトしておりますが、やがて春までの眠りにつくことでありましょう。
だからダイニングには、冬場にはカメ子の姿はないのであります。
ロメオやジョルノは、そのことに別に不自然さも覚えず、しかし、先ほどまであったカメ子の水槽代わりにしている押し入れ用の衣装ケースが置かれていた場所を、しきりに嗅いでおりました。
そして、私メも、カメ子の不在を淋しいとも感じないのであります。
自転車で家の周りを走らせたら、いつしか木々の紅葉も薄くなり、冬枯れの景色であります。
ホッキ貝の良いヤツがありましたから、二個買って帰るのでありました。
そしたら新聞屋がたっておりまして
「朝日新聞をとってくれませんか」
断りましたら、
「そうですか…」
と、諦めて引き返していきました。
こういうエピソードは、すぐに忘れますが、夢などに再現されたりするものでしょう。
さようなら、春になったらあいましょう、カメ子。
ちょっと肩の荷が下りた気持ちです。
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2012
11.21
2013年度版の、十傳クラブ会員限定の「しあわせカード」が完成したのでありますです。
「免罪符カード」であります。
これで多少の不道徳をおかしても、許されるのであります。
誰が許すかですと?
それはご自分の体内に眠る神様に決まっておるのであります。
12月より、私メの仕事が増えたという、自業自得というか、自分の首を自分の手で絞めるような作業が始まるということになるのであります。
「作業?」
などとお聞きめされるな。
カードを、ほいほいと送るだけではございませぬ。
裏面をごろうじてくださいまし。
こちらに、会員の皆様のお名前をもとにして、一年間のバイオリズムを記入し、それをパウチいたしまして、それからそれから宛名を書かねばならぬのであります。
宛名はペタペタのヤツではなく、毛筆でしたためますですから、お習字の練習も兼ねているのであります。
これを毎日、10通ずつほど送るのでありますです。
会員の皆様、ゆっくりとお待ちくださいまし。
「まだですか?」
なんて請求してはなりませぬ。
ヘソが曲がりますですからね。
なにしろ、お金はいただきませぬ。完全なボランティアってわけであります。
すでに、段ボールから溢れるほど封筒をストックしているのであります。
二年前は会員数もまあまあでしたから余裕だったのであります。
が、昨年はゼイゼイしながらの作業でありました。
今年はさらに会員の方が増えましたから、もはや苦行の何者でもございません。
問題は切手でありますよ。
これがバカにならないのであります。
私メは、沈黙し、しばし腕組をするのでありました。
金儲けばかりじゃねぇかと、メールで、福本銭にケチをつけた人がおりましたが、ソヤツには送らないねぞは!
と思いながらも「いやいや、そうではいけない」とおもい直し、組んだ腕をほどくのでありました。
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2012
11.20
調布駅からタクシーで10分ほど。
ここは深大寺なのであります。
学研のフィッテという月刊誌の「パワースポット巡り」の企画のために赴いたのでありました。
編集の方々もカメラマンも、モデルさんも、みなお女性。男は私メだけという、素晴らしいシチュエーションでございました。
しかも、「お母さんの年は?」「お父さんはおいくつ?」
と尋ねますと、40代なのでございます。
つまりお女性というより、女の子の孫に囲まれているようなもの。
濃厚な「気」が充満しておりまして、やはり深大寺は都内では最高のパワースポットなのであります。
ギャラをもらって、懐かしい場所を歩くのは最高の気分であります。
アパートから、この境内まで毎日のように「気」をいれるために走ったのは、じつに28年も昔のことであります。
一時は19キロも減量したものでありました。
もう、その頃の記憶は薄れておりますです。
調布に住んでいたという記録はありますが、何を考え、どういう言動をしていたのか、さっぱり思い出せないのでありました。
まさに老人の如く、若いお女性のあとを、あはあはとついて歩くばかりなのでございます。
木にお手てをあてて、「気」を吸い取るコツを伝授したのでありますが、どこまで伝えることができたのやら。
まあ、すこし休みましょうと、私メが好きな店「きよし」へとなんとなく誘導し、「ここだ、ここだ」と偶然に見つけたように、そばを奢らせることに成功したのでありました。
占いは、「いつ効果が発現されるのか」ということも大問題であります。
パワスポットの場合は、毎日続けることが必要でありますが、効果は約三ヶ月後くらいにでるものであります。
が、何事にも例外があり、「速応」といいまして、すぐに効果がでる場合もあるのでありますです。
いままさに、運ばれた蕎麦を一筋すすったとき、携帯が鳴りました。
ある雑誌からの原稿依頼でありました。ある事情で二年間、意地を張っていた雑誌でありました。
これについてはいつか語ることがあるかもしれませぬが、私メはつまらないところで意地になる性質がございます。そして、それでヨシとするところがあり、いくども無駄な損をしているのでございます。
が今回は、
承諾いたしました。
これぞ、パワースポット巡りにおける速応に他ならないと直感したからでございます。
深大寺……。
ここは良い気の集まるスポット。
いつか皆様と来て、気を入れる作法をご伝授しても、楽しゅうございますですね。
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