2013
09.06

毎朝、カメ子の水槽を洗っておるのでありまして、その間は、カメ子はベランダで運動。
ところが、今朝は、出しぱなっしの水道の水の下に駆け寄り、甲羅の滝打ち行のようなことを始めたのであります。

どーやら、カメ子は一回り成長したらしく、剥がれかけた甲羅を、水圧で洗っているようなのであります。
ムズムズするのでありましょう。
水の無駄使いではありますが、あまりの気持ち良さそうでしたから、しばらくそのままにしておりました。

大小の甲羅の皮が飛び散っているのでありました。

「こんなになって、辛そうね」
はるか過去からのお女性のお声が降臨してきました。
「楽になっちゃいなさいよ」
と。

しごきかたによって、お女性の愛情の深度が分かるものであります。
「それだけか…」
と失望することもあれば、
「そんなにまでしてもらわなくても…」
と感動する場合もございますです。

頭が真っ白に漂白される過程を自覚することは楽しいひとときであります。
男だけでなく、お女性でも、そういう経験があるはずであります。
血液が下へと集まり、野獣へと化身していく短い時間。それは濃厚な濁情へのプロローグかもしれませぬ。

そういうむず痒さを経験しておりますゆえに、カメ子を水道の水から救い上げて、甲羅をブラシでゴシゴシしてあげるのでありました。
ゴシゴシとは申しても、力任せではいけませぬ。
唇でなぶるような具合が嬉しそうなのであります。
縦横、そして円形に、あるいは逆なでを何回かにいちど取り入れるのであります。
手先の動きだけでなく、ちょうど「首も使って」と命じたことを思い出し、ゆるやかに腕を上下してモミ洗いしてやったのでございます。

ぬるぬると皮がむけてくるではございませぬか。

甲羅の紋を数えましたら、18ほど。
カメの寿命は人間とほぼ同じで60年。
ふーむ、お年頃でございます。

「冬眠するまで、まいにち、こうしてやるからな」
とカメ子に約束するのでありました。