2013
09.28

横須賀での用事の後に、ひとり城ケ島に立ち寄ったのでございます。

息抜きをするほどの多忙さではありませぬが、夏のうちは賑わっただろう、誰もいない海を眺めるのは、心に爽やかなのでございます。

海水はどこまでも澄んでおりまして、小魚が群れをなして右に左に身をひるがえして泳いでいるのでありました。
「もう逢わないことにする」
などという言葉が過去から浮上してきましたけれど、それには耳を貸さず、風の吹くままに髪をなぶらせるのでございました。

腰をおろすと、石灰岩の岩はお尻に優しく、どことなく温いのでございました。

蟹が寄ってきました。
夏のようなすばしっこさはなく、私メの指に乗ってきたのでございます。
ギョッとして目を飛び出させておるのでありました。

蟹の目から、私メはいかように映っているのでありましょうか。
「いつも死ぬ事ばかり考えたの」
という殺し文句にも、職業柄、鈍感になっておりますから、人の皮をかぶった魔物に映っているのかもしれませぬ。

海岸の岩場をうつむきながらあるく初老のオヤジを、鳶が「こいつは食い物ももっていない野郎だ」とでもいうかのように高く低く旋回し、どこかへと飛んでいくのでありました。

伸ばせば手が届きそうなほど近くに見える海底でありますが、潜っても3分と生きてはおられますまい。

汚れた地上こそが、私メの生きる世界かと、ため息をつきましたが、絶望でも希望でもない、安心感に包まれる矛盾もまた良いものでございますです。

握り飯を頬張り、帰りにファミレスなんかで、餡蜜でも食おうかと、腰を上げるのでありました。
いままで手のひらの中にいた蟹は海水の中に逃げ、一生、握りしめることはないのかと思ったりするのでございました。

ああ、そういえば、「奇門遁甲講座のリサーチ」についていろいろとメールをありがとうございました。
メールのお返事は返しませんですが、この場をお借りしてお礼を申し上げますです。

改めて、講座の募集をいたしますので、ちとお待ちくださいまし。