2015
11.19

新幹線のホームから在来線のホームを見下ろすと、理由のない優越感をおぼえるのでございます。

いつもなら、あのホームから東京駅の構内を東西線の改札まで急いでいるのであります。なんだかバカみたいに感じてしまいますです。

モリオカに向かうのであります。

昨日、大宮まで遠征したのですから、その足でモリオカに行けば効率的でありました。そういうことに後になって気づくのですから、ちと忙しくて頭が回っていない証拠でございましょう。

座席の背もたれをたおし、キャリーに足をのせて目を閉じますと、東京でのことが初期化されるように、頭が漂白していく心地よさ。
床屋で無防備にさらした喉にカミソリをあてられている感じに似ておりますです。
お女性の手のひらで処理されているスリリングな信頼感にも似ておるのであります。

空いた車内に、珈琲の香りが流れております。
覚醒と眠りの境をさまよいつつ、たまにシェードをあげて青空を眺めるのでありました。

ふと、「しまったな、空亡や支冲のそれぞれの意味を講義すべきだったな」と四柱推命の講義が頭をよぎりますが「まぁ、来月のことだし」と、これも初期化。
…「!」と突如として股間に手をあてました。
大丈夫であります。ファスナーは閉じられておりましたです。

頭の位置を変えますと「くくくくっ」と笑い声。
幻聴であります。お女性が過去からお話ししようとしているに過ぎませぬ。
いくつかの河を渡り、いくつものトンネルを抜け、新幹線は一直線にモリオカへと向かっております。

40年前は特急で6時間30分、急行で9時間の距離でしたが、いまはすこし早すぎる気がしますです。