2018
08.23

最後の原稿をかきあげましたら、入道雲が東の空に広がっておりました。
晩夏でございます。

始まったものは、いつかは終わる事とは知りながら、こんな夏の終わりにエンドマークが付けられるわけでございました。

新幹線に乗り込み、雑誌を広げ、そのままうたた寝をこき、すると緑いちめんの田園が目に染み入るのでありました。
予定では、40代には東北に引っ込むつもりでございましたのに、人生は皮肉にも40代から忙しくなりましたです。

とりわけ今年の夏は激務でございました。そして、それは続くはずであります。

まるで、秋を告げる一枚の枯葉のよーに、ひとつの仕事が終わり、ふたたび運命は、
「新たな船の舵を南南西にきれ!」
とでも命じているよーでこざいます。

「秋の虫が鳴いているね」
しかし、私メの耳には聞こえないのであります。
齢とともに聴力は衰えているよーでありまして、ついに若者には聞こえる高音波が、まったく聞こえないのであります。
それを利用して、夜の公園に高音波を流し、若者のたむろすることを防止するというお話は聞いたことがございますが、ついに私メの耳に届かなくなったのであります。

新しい水夫として大海原に漕ぎいでることは億劫でありますが、たとえ七日目に死んでしまう蝉だって殻を脱ぎ捨てて夏空を飛び舞うのですから、別の次元へと錨を上げなくてはならないのでありました。