02.04
よぼよぼの年寄りだから優しくしたのに、その老人は優しさを誤解して、本気に求めてくるというもの。
「勘違いにもほどがある!」
そーなのであります。
老人だとて男は男。
肩が凝っているという訴えに、肩をもんでやるたびに三千円をくれるので、良いバイトだと思っていたら、「そろそろヤラせろ」と欲望を剥き出しに、それもしつもく自宅までやってくるという、忌々しい悩み。
そーなのであります。
老人だから、どこまでも図々しく迫れるのであります。
「殺す方法はありませんか?」
真剣な悩みにまで発展して、私メの鑑定を受けに来るのであります。
私メだって老人。
気をつけねばならぬ。お女性から、そーいう対象で見られるはずはないのだと、心を戒めて、鑑定に集中するのであります。
たしかに、懲らしめる方法はいくつかございます。
その方法のひとつを施したことがありまして、それは昨年のことですが、年末に、
「死にました」
鑑定のお客様は、こんどは少し怯えて事務所にいらしたことがございます。
じつは私メも、その効果に驚きまして、
「これは使ってはいけない術だぞ~」
むろん、たまたま亡くなったのであり、その効果は万人に対するものではありますまい。と思いたいのであります。
言いたいことは、老人は、わざとヨボヨボを装ったり、縋りついたり、馴れ馴れしく張り付いたりいたりするものだということを頭に叩き込んで欲しいのであります。
優しくする必要はございません。
70歳過ぎて図々しく生きているだけでも腹が立つではございませんか。
ああ、いやだいやだ。
かっこよい老人でいたい。
頑固で不機嫌な老人になりたい。
老人の笑顔に注意くだされ。
笑顔は、もともと、これは老人に限らず、お女性をたぶらかすための基本。あるいはお金儲けのため。さもなくば災害が起きた場合に手を差し出されるための保険。これが笑顔の正体。
そんな欲望に背を向け、誰からの意識からも消えてしまう老人になりたいのであります。
ああ、それでも、この世で一番美しいもの。それは女性の裸体。