2012
08.11

今夏は、ホタテをいただく機会が多いのであります。
またまた北海道からホタテが…!

焼いて、刺身にして…、おっとと、醤油を入れすぎました。
背中にホクロができやしないかヤバイですね。
淫蕩な血がざわめきますから。

北海道のお女性を、私メは10代の頃から畏れているところがあるのであります。
情熱的なところが、コワイのでありました。

その昔、修学旅行専門の旅館で住み込みで働いていたことがございまして、日本のお女性の北から南まで、その習性をなんとなく感知する習得になったのでありますが、あるとき釧路からの修学旅行生のなかに、その女の子はおりました。

彼女のグループをつれて観光地をあんないしたものでございます。
以後、四年間ほど断続的に手紙のやりとりなどをいたし、早春に釧路を訪ねてから、恋愛風になったのでございます。

すでに私メは東京に住んでいたのでありますが、仕事から戻ると、彼女がアパートのドアの前で旅行鞄に座っておりました。
あれには驚いたものであります。
「きちゃった…」
なんて舌をちろっとのぞかせましたが、こちらは嬉しいより、いささか迷惑。

ドラマにすれば感動的なのでありましょうが、情熱が重いのでありました。

あれから何年が経つのか、数えると気が遠くなるほどでございます。
関係が破綻して、翌年の夏に手紙が届きました。

彼女は小学校の新米教師とか。
「それでね、しゅうまい先生って呼ばれてるんですよ」
と書かれていました。

「カブトムシを幼虫からたいせつに飼っていたんですね、教室で。それが今朝、孵化しました。でも、ちょっと触ったら角が折れてしまったのです。すごく楽しみにしていたのに、気持ち悪くって。残念でした」

この一文が忘れられません。

私メとの関係を、カブトムシにたとえていたのでありましょう。
その意味を考えようといたしました。

分かるのです。が、分かりたくないのでありました。

釧路に戻るという日に、私メは羽田空港にいたのでありますよ。
しかし、会うことはできませんでした。

だから、さいごに記憶にあるのは、肩を落として新大久保の改札口をぬけて、ホームへの階段をのぼっていく姿なのであります。

北海道へは、なんども行くのでありますが、そのたびに、私メは、うしろめたい気持をはらすことができないのであります。そして、それでイイのだとおもうのであります。

トラウマというのかTPSDというのか、そういうものも大切なのかもしれませぬ。