2016
12.02

冬の花はかなしいものでございます。

が、蕾になっては、もはや咲くしかありません。
これから冷たい雨に打たれ、寒風にさらされ、霜に凍え、雪に埋もることでございましょう。

「綺麗ですね」
とは慰めの言葉。可哀想だとホントのことは申せませぬ。止めなさいとも大変だよとも言えませぬ。だから「とても綺麗よ」の慰め。

街角の夜の密会を語っているのでございます。
濁情に年齢はございません。
心は老いることがないという無情は、罰の一つでしょうか。

イルミネーションの森のここそこに恋人たちが立ち止まる足型が設置され、機械の判定に合格すると、ハート型の光が回りだす装置に嬉しがる、そんな若者たちに交じる勇気も出てくるのでオショシイ次第。いや、やってませんって。羨むだけであります。

ポケットの中で握りあうお手てとお手て。
吐息はワインの香り。

別れれば夢から覚醒するシンデレラ。
百年の現実から濁情の花園に目を覚ます眠り姫。

やらわかな花びらは昼間のうちはおののくのでございます。
けれど
冬のはやい黄昏に足元から闇につつまれるのであります。
闇が広がると鼓動がこきざみに揺れ動きますです。

「いけない…」
地下鉄で約束の場所に急ぎつつ、トワレをふりかけることを忘れたと、それがとんでもないしくじりだったように感じられ、ああ、はじまってしまったのだと心が染まるのでありましょう。