2017
03.03

サーモンの皮がてんこ盛りで百円で売っておりました。

迷わず、それだけ購入。

レジで「袋イイですよね」と勝手に決めつけられ、その目の奥には「可哀想な老人」みたいな光がありありと浮かんでおりました。小銭入れにちょうど108円があったのも、店員の涙と優越を誘ったのでございましょうね。

が、鮭は皮こそ旨いのであります。

お女性の美容にも効果的だと聞き及んでおりますです。

荒塩をふりかけて焼く、その焼き加減が大切。
焼きすぎてはなりませぬ。さりとて焼きが甘くては噛み切れないばかりか、蕁麻疹の原因になるのであります。それには生焼けくらいで火を止めなければならないのでございます。あとは余熱で。

焼き上がると、さらに、しみじみとした哀愁を帯び、これがまた心を震わす感動の食いものとなるのであります。

「おまえの、自信のないオドオドしたところが魅力なのだよ」
と目を細めてお女性に語りかけたりいたしますが、鮭の皮も同じであります。
「どーだ、この美味さは、ほかの奴らは、おまえの佳さを知らずにおわるわけだ」
鮭の皮も気持ち良さそーにむさぼられていくのでございます。

「わたしはゲテモノでしょーか」
ああ、ゲテモノさ、ゲテモノのなかのゲテモノだよ。
「心は?」
「そんなものは捨ててしまうんだ、心より皮だよ…」
ショー油もかけてやろうか、ショー油に含まれている甘さが、おまえの味をさらに引き立てるのだから。この味を知ったら、もう普通の切り身などバカらしくなるぞ。
「焦らさないではやくかけて!」
鮭の皮は、みずから開いていくと見えたのは、まんざら錯覚ではなさそーなのでありました。