2018
10.15

秘密の恋が暴露され、そこから2人の風景の相違があきらかにされるというケースがございますです。

スリリングだった関係が、突如としてリアルな現実問題となったとき、
「たいへんなことが起きました!」
占いに相談にこられる方は多いのであります。

夫から追い出されるのは罪として甘んじて受けるとして、相手の男がこれまで見せなかった社会人としての顔をみせるのであります。
「きみといっしょに暮らしたい」と言っていたのに、「待ってくれ」と及び腰になるのはほとんどのケースでありまして一致しております。

耳を傾けながら、私メは「自分だったら」などと想像に耽ることもしばしば。

もしも、自分が漂泊の詩人だったり、放浪のカメラマンであれば、ためらうことなく、相手のお女性を軽トラの荷台にくくり付けて略奪するかもしれません。
しかし、もしも自分が弁護士だったり医師だったり、つまり社会性のある仕事についていれば、いやひとつの土地に根をつけている生活をしているなら、お女性と暮らすことによって失われるひとつひとつを計算することでありましょう。

仕事は安泰で収入面での不安はなくても、家族や親族などや、煩わしい手続きを考えると、やはり「待ってくれ」と腰がひけるであろうな、と。

が、自分が狩猟民族的な仕事の放浪者で、たとえば行く先々で占いによって生活できる収入の確保の自信があったとしても、では、相手のお女性は、
「はたして付いてくるのであろうか」
と首を傾げるのであります。

夫や家族と決別したお女性は、男にも同じような痛みを知ってもらいたいのではなかろうかと。のほほんと現在の生活を維持する理不尽な不平等を許せないのではないか。そもそも「漂泊の」という子供じみた前置きが、「それこそが裏切りの気持ちのあらわれではないか」と憤慨するはずであります。いかにも流浪とか放浪とか漂泊などはファンタジーでしかありませんです。木村満夫と名乗っての、嘘つき旅行だとてせいぜい三泊四日が限界。

「そもそも」と男は考え始めるのであります。自分が社会的な立場だったからこそ、このお女性は甘い吐息をオレの耳にけむらせたのではないか。無名で地位もお金も無くても恋してくれたのか。もう考えるのはやめよう、と。

「まぁ、ここは落ち着いてワインを飲もうではないか」
グラスに赤い液体を注がれ、
「飲まないの、どうした」
赤いワインは飲むものだけど、いまは液体に映った店の窓枠を眺めていたい。この気持ちが分かってもらえないようでは、
「もうお仕舞いね」

しやわせか不幸かを決めることは、お女性の経済性にかかっていることは、これは占うまでもないことなのであります。
快楽が冷めると、そとは冷たい現実の棘が突き刺さるのでありますから。