2013
12.21

老母とすこし早いクリスマスケーキであります。
モリオカの中心地のはずれにクロステラスという衣類も扱えば直産野菜も売っているというオシャレなのか地味なのか分からないデパートというには寒々とした奇妙な店があるのであります。

買い物を済ましたあと、そこにあるイタリアン・トマトなんとかに立ち寄り、リンゴジュースにアップルパイで一休み。
テーブルの下を、ごらんくださいまし。
骨折した左足をギブスで固めた老母の足が見えるでありましょう。

「痛でどぎは甘めもの食うにかぎるよ」
「何年ぶりだべ、ケーキなんて」

痛い時だけではありませぬ。何かに悩んだ時、絶望にくれた時、孤独になって生きる意味を忘れた時、人知れず痔の痛みに耐えている時など、甘いものが一番であります。
とくに今の時期は、資格試験の不合格が届いたり、恋を失い、精神がズタズタになることも多いのであります。
リンゴジュースでもいい、ココアでも、砂糖を溶かしたミルクでもイイのであります。ゆっくり味わいなされ。
「まぁ、こんな時もあるさ」
と、温かな言葉の滴が心に結晶するはずであります。

「めがったぁ」
と皺だらけの老母の表情にもわずかにゆとりがみとめられましたから、「では…」と、秋田県との県境に近い道の駅の「姉っ子の湯」までドライブをいたしました。

荒涼とした12月の風景は、むしろ気持ちに安定感を与える落ち着きが宿っているのでございます。
「髪、洗いてぇ」
「無理なんだ、その足だば」
温泉は外から見学だけ。
「んだたて、この髪で正月を迎えるのは、おしょすおん」
でも、近所の美容室にいけば骨折したことが周囲に広まるからやんたということで、ふたたび市内にもどり、知り合いがやっている美容室に母をおき、時間がくるまで、私メは喫茶店でクリスマスツリーを眺めるのでありました。

今日の日を、いずれなつかしく思い出すのだろうなぁと、悲しく思いながら、またしてもケーキを注文するのでありました。