2018
11.26

好むと好まざるにかかわらず、毎年、同じ時期に出向かなければならない同じ場所がございます。

役所でございます。会社の申告書の提出に、
「ああ、また来たか」
奇妙な懐かしさに包まれるのでありました。
新宿の繁華な通りの一筋裏側なのに、静まり返った都税事務所。
勤めることのできない厳粛な場所。

けっして嫌いではございません。

そして、提出後は、やはり同じ喫茶店「ai」で煙草をやりながら珈琲をすするのでありました。

砂糖はいれますがかき混ぜることはいたしません。
残り少なくなるにつれ甘さが感じられるのがイイからであります。

次に向かうのが朝鮮料理のお店。
店内は朝鮮の地図や、タレントの写真。
そこで注文するのが冷麺なのでございます。

しばらくして、餃子と朝鮮漬けが運ばれてまいります。
餃子はあまり美味しくはございません。

が、この朝鮮漬けが絶品。

「うまい!」
と褒めたら、店のオバちゃんが喜んで、ビニール袋にたくさん入れてくれたことがございます。
それがビニール袋が一枚だったので、臭う臭う。
電車のなかで大変だった記憶がございますから、以後、ムスッとしておりますです。

慰安婦ざんすか? と尋ねれば良かったかとも思いますが、止めておいて無難でありましょう。知り合いのイタリア人のフランチェスカが、親元で「いつゲイシャになるのか」と聞かれたそーでございますから、私メの意地の悪い先入観も海外から見れば、あながち間違ってはおりませんでしょう。

ぶつぶつと色んなことを考えていると、冷麺が運ばれてまいりました。
これが美味いのであります。

美味いものに国境はないなぁと、ずうずうしく他国の食い物を私物化するよーな思いにとらわれるのでございます。

大久保は朝鮮人の居住区でありますが、この店ほど冷麺の美味い店はないかもと言うほど本場モノなのであります。

辛いとは思わぬのに、汗だくになるのでございます。
酢と辛子と朝鮮漬けを加えて、下品に混ぜて喰うのがイイのであります。

レジで、オバちゃんが、親し気な表情を作りかけたので、敢えて帝国陸軍兵士の顔のままお金を支払ったのでございました。

また、来年も来るからね、と心でウィンクしつつ。