2014
07.29
07.29
アポリネールは、きみのからだの九つの扉として、ぼくはその七つを知っていると記していますですが、おへそが、その九つの扉には勘定していないご様子であります。
とすれば、おへそは第十の扉。
私メだけの統計ではございますが、最近、画像のような縦長ヘソが絶滅危惧の感じなのであります。
丸くて大きなおへそが主流でして、1970年代に流行の縦長ヘソをほとんど見かけなくなったのでございますです。むろんお女性さんのことでございますですよ。
「あら、わたしは縦長よ…てか、でしたよ」
と50代のお女性さんはおっしゃっておりましたが、「そーね、娘は…やっぱ丸いわね、おへそ」と、どこか娘ごさんに勝利したように声が弾んでいたのは、私メの耳の具合によるものだったのでしょうか。
みじかな這うような苔で覆われた第八の扉。
真珠の間に潜む第九の扉。
そして、砂丘のオアシス、第十の扉。
第十の扉だけ私メを阻むのであります。
第一の扉から第七の扉まで、とくに第三の扉はトワレをふりかけた肌の匂いに紛れて入っていき、第五の扉には野太い肉声で入り込み、第七の扉は息詰まる舌の動きでノックをいたしましたです。
「どの扉が好き?」
と聞くと「ぜーんぶ」と答えてくれたお女性さんは、たしか縦長ベソ族であったような。大きな乳房だったので屈むと重さでシャツの襟ぐりが広がり、おへそまで見渡すことができましたっけ。
そのご結婚して赤ちゃんを身ごもった時、
「ねぇねぇ、おへそから毛が生えてきたよ。見る?」
なんて罪深い電話がございました。
かれこれ30年前のエピソードでございます。
いまでは絵画や彫刻でしか見ることが難しくなりましたです。
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