2017
08.26

郷里のモリオカで静養中なのであります。

納屋の奥に壺がありまして、開けましたら、中からご覧のような古い紙幣と、古銭がザクザク。

悲しいことに、私メにも記憶のある紙幣であり、この身も老いぼれたことを痛感したのでありました。

なにゆえに納屋をひっかましていたかと申しますと、遠い親戚が昨日なくなり、
「あの人から前にいくらもらってらっけか?」
と、葬式と聞いてウキウキ元気だった老母が申しましたから、祖父が死亡した際のお悔やみの記録を探していたからであります。
また残念なことに壺の中に蓄えていた紙幣は、すべて少額でして、現実的には役には立たず、ただ当時のよすがを懐かしむことにしかならないのでございました。

が、遠い親戚が亡くなったのが昨日とすれば、昨夜の家鳴りは、そういうことだったのかもしれませぬ。
家鳴りだけではなく、隣の閑室で、何かが滑り倒れる音もございました。
ミシリミシリと人の歩く音もいたしました。
念のために、隣室をのぞきましたが、暗闇の中で床の間の掛け軸に描かれた枯れ木の鳥が、私メをじっとうかがっているばかりでございました。

「こう子ちゃんが亡くなりましたよ、昨日死にましたよ、73歳だったど」
今朝、近所の人が教えてくれたことを思えば、はたと
「それであったか」
気づくべきところを、遅れたお盆の墓参りの支度をしていましたので、思い出しもいたしませんでした。

古壺の紙幣を発見し、はじめて、
「昨夜の物音は、もしや…」
などと気づいたのでありますから、幽霊としては焦れったかったことでございましょう。

さきほど老母が寝室から
「歯、折れだー」
と古札を数えているところに、折れた歯を手のひらに、顔をのぞかせたのにはゾッといたしましたです。

どーやら母に来たよーであります。

私メは古銭に汚れた手をジッと見つめておりますです。