2021
09.09
09.09
ひとりが好きではありますが、お女性がいなくてもイイというのではございません。
食事を美味しくいただくのも、お酒に気だるく酩酊するのも、健康のためにも、お女性は欠かせない大切な存在なのでございます。
たまには甘い言葉を囁きたいし、ふたりで歌をうたってもみたいのでございます。
それらは単語が音符のよーに、まるでちいさな花火がスパークしては消えていく、はかない言葉であってほしいのです。
意味を成す会話は、空間を汚しますです。
私メは、お女性と向き合いたくございません。
ただ美しさだけを感じたいのであります。
お女性が寝ている。目を覚まさないよーにそっと立ち、キッチンで珈琲をいれる、あの安心できる時間。
お女性だって同じではないでしょーか。
単語だけで一つになれるふたりはしやわせなのであります。
すき、おいしい、きて、よっちゃった、あつい、かたい、そこ、だめ、ちかくにいて、きれい、そーされると…ばか
言葉が会話になり、その会話が長くなるにつれて不幸がはじまるのであります。
意味を持つ会話はいりません。
お女性が眠っている。
目を閉じて、すこし口を開き、やわらかく眠っている。
ゆたかな髪の毛をしなやかにひろげて眠っている。
たとえ老いがしのび縮緬皺が胸元を翳らせていたとしても、眠っているお女性は乙女の面影なのであります。
冷蔵庫からまっかなトマトをとりだし薄暗い空を仰ぎながら丸ごと頬ばる。
また珈琲を。
それから寝室にもどり、冷たくなった指をお女性の腋にさしこむのでございます。
切り切れの単語が蝶のように部屋を飛び交い、ふたたび深い眠りにつかせるために。