2023
07.18

激暑の東京をあとに、今月も実家のモリオカへと向かうのでした。

私メの隣の席には小学五年生という美少女がひとり旅。
美少女の母君が、見送りに新幹線の車内まできていて、
「この子をお願いします」
聞くと、モリオカまでとか。

わかりましたと答えたのですが、なんとなく緊張いたします。お女性デビューまで、あと数年という蕾ちゃんです。
あまり話しかけても迷惑だろうし、無碍に接することもできません。
むごんをキープしつつ、困ったことがあったら手を貸そうというスタイルに決めまして、なるべく、やさしい目つきをするよーにと、スマホの自撮り機能をつかって、ほれ、このよーに表情を調節するのでした。

これがお年頃のお姐さまならば、チャンスとばかりに作戦はあるのですが、蕾ちゃんでは緊張するのであります。
うるさくしつこいジジイと思われたくございません。

たまにチラリとみましたら、蕾ちゃんは、「ハムスターの飼い方」の本を眺めてらっしゃいました。が、蕾ちゃんは、こ本を眺めつつ、隣で盗み見している私メを意識していることが伝わってきましたので、寝たふりを決め込むのでありました。
小五はすでに意識は大人でございます。
無防備に両膝を広げていても、脇の下をさらしてあくびをしても、意識は大人という泥水が侵入しているのであります。

どんな恋をするのだろうか。どんな男に抱きしめられるのだろう。そしてどんなババアになるのだろうか。
ついに一言の会話もなく、仙台を過ぎ、モリオカへと列車ははしるのでした。
さあ、降りるよ、と目で促し、蕾ちゃんをデッキまで誘導しました。
新幹線は速度をおとし、モリオカ駅構内にすべりこむのでした。

モノオカ駅のホームには、蕾ちゃんの婆さんが出迎えに来ておりました。
そして蕾ちゃんは、最後に私メにマセタお辞儀をすると、ニッと笑いかけ、手を振るのでした。
なのでウィンクでお返ししましたです。

私メはホッとしまして、改札口につづく下りのエスカレーターで長々と音なしの放屁をするのでありました。