2025
08.12

モリオカのはずれに建っているアネックスカワトクというデパートが今月の18日をもって閉館するらしいのであります。

かつて、この場所に修道院がございました。
幼稚園児だった私メは、叔母につれられたことを憶えております。
ぽつぽつと頬の毛穴が黒ずんだ修道女に案内されて院内をまわりました。
「来年は、もう入られないからね」
小学生になるとオトコと規定されるからであります。

そんなことよりも「臭い」が気になって仕方ありませんでした。高窓から色ガラスをとおして光が埃を浮き上がらせ、重い扉は閉められておりました。
その臭いが、「女のニオイ」だと分かったのはずいぶん大人になってからであります。
ベッドに横たわった年上のお女性の毛布を剥いだ時、「修道院の匂いだ」と一瞬、時間をワープいたしました。
甘酸っぱい、それでいて饐えた毛羽立つ匂いに、この人とは暮らせないななどと動物になったのでございます。

モリオカのはずれにアネックスは建っていると申しましたが、それ以前は、修道院から向こうは深い森でして、何者かに追いかけられているよーな恐ろしくて背中がざわざわとする禁足地なのでありました。

アネックスの建物がたってから周囲は開発されだしたのです。

ふたたび一帯は廃墟になるのでしょーか。
なったら心が落ち着くだろーとも思えます。

いいえ、そんなことにはならないでしょー。
別の店舗にかわり、ここにアネックスも修道院があったことすら、だんだんと忘れられることは確かです。

さいごの想い出に、アネックスの臭いを嗅ぎに赴こうかとも考えております。