2015
05.08

なんじゃもんじゃの木が満開だと聞いたので、すべてほったらかして自転車で見に行ったのでした。

お寺の奥に、その木は白い花を咲かせておりました。
人の気配はありません。
しかし樹の気が満ちているので充満した重さが感じられるのでございます。

なんじゃもんじゃの木は、神事や占いに用いられることは知られざる事実であります。
願いがかなう樹木なのであります。

だからこのお寺では大切に手入れして、人々を招くよーに椅子やテーブルやお茶やお菓子を用意しているのでございます。

が、無人。

良い事であります。
私メが願い事を独り占めしてやろーではございませんか。

白い花はまるで「あなたがいくのはそちらではなくこちらですよ~」というように一定の方向を指し示しているのであります。
「今日はここにきて良かったわね。もし計画していた方向に行っていたらきっと悲しい思いに沈んだことでしょう」
白い花は語りかけているよーでありました。

「あなた願い事はなんてしたっけ?」
思い出したようには白い花は微笑みかけるのてあります。
呪文を三度述べて、声を出して願いことを言うのが、作法なのであります。

願い事を述べましたら、「はて、それが本当の願いだったかな」と首をかしげたくなりましたが、欲張ってはいけません。
願い事が通過した証のように、ざわざわと枝々が揺れるのでありました。
空が瞬間、回転したようにも見えました。

降るような気の重さを背に受けつつ、自転車を止めたところまで戻るのでありましたが、誰の姿もありません。線香の香りはしますが、墓石はとりどりの供花がしおれているだけで線香の煙もございません。

良い日だ、佳い日だと私メはなんとなく体内に良い気が入ったような錯覚を楽しむのでありました。

おデートをキャンセルして良かったと思ったりもいたしたのでございます。