2022
04.24

年齢がいくと、初めてのことはあんまりないと思っているのですが、
「いやいや、今日という一日は、おまえさんにとって人生初めての日じゃろー」
などと禅問答っぽくしゃべる瀬戸内寂聴気取りのバカ者がおるかもしれませんですね。

でも、初めてのことにぶつかると、
「いまさら始めても…」
腰が引けるのも事実なのであります。

さる高名な気学家が、晩年に、自分の誕生日が違っていた事実に直面したとき、
「しかしなぁ、いまさら四柱推命を学ぼうとは思わんのだよ。いまのまま気学でいくよ」
と漏らしたことは一部では有名なはなしでございます。

私メは…。
生まれて初めて、耕運機なるものを体験いたしました。
それはもう滑稽でございましたでしょう。
通りかかるオバさんも女子学生も唖然としておりましたから。

モーターというのか、エンジンというのか、とにかく耕運機が勝手に進み、へっぴり腰でハンドルを握っているのが精いっぱい。
うねうねと耕運機が動くのでございます。
荒馬に翻弄される老人の図、そのもの。
説明書を見ましたら、移動時と、耕運時の、何かを変えなければならなかったよーでありますが、いまだによく分かりません。

しかし、耕運機を使う前に、スコップで固くなった土を掘る作業があり、いやいや、その前に草取りも致しましたから、そこで完全に体力を消耗したのでありました。いやいやいやいや、まず耕運機のモーターを回すまでもが一苦労。
いくらスターターの紐を引っ張っても、うんともすんとも言わず、こちらの息はゼイゼイ。気持ちはイライラ。

耕し終えたところで、もうバテバテでございました。
が、そこからが根性。
牛乳を一気飲みしまして、畝作り。

さらには種芋を植えたのでありました。

なんだか遺跡後の発掘現場みたいになりました。
渦状の畝なのでありました。

問題は、はたしてイモが出来るのかどーか。
しかし、それはまた別のお話。ここで心配したところで、どーなるものでもございませんし。

とにかく、耕運機を『幸運記』とダジャレたところで満足したのでございました。

2022
04.23

苦手なモノに、木工がございます。
設計図を作るのは大丈夫なのですが、木材を切ったり、鉋をかけたり、釘を打つのがダメ。小さなものならまだしも、本箱などを作ると、どーしても歪んでしまうのであります。

中学の技術家庭の教科で、やはり木工作業がありましたが、椅子を設計したのですが、失敗いたしました。
帰り道、上ノ橋の上から中津川に捨てた記憶がございます。

もうひとつ苦手なのが、農業。
草取りやスコップで土を掘り返すまでは上手くいくのですが、キャベツも大根もすべて上手くいった覚えがございません。
自宅の裏にわずかな農地がございまして、祖父や父親は楽しそーに耕していましたけれど、私メはイヤで逃げてばかりでありました。

が、そーも言っていられない時代がそこまで来ているのであります。
ホーマックというホームセンターで種芋を求め、いよいよ植え付ける覚悟を決めましたです。

くだんの農地は放置されて、さぞや掘り起こすのがタイヘンでございましょう。

しかし、食糧不足の地獄をすこしでも軽減しなければなりません。
「イモならなんとかできるかもしれない」

心の声に素直に従おうと思うのでありました。

これまでも、心の声に救われております。
近くは、リモート講義でございます。
中国人による新型肺炎で、社会がテレワークに移行する1年前あたりから無意識に準備しておりました。
またモリオカの実家の建設も、今年やっていたら、ロシア産の木材が不足した直撃をうけていたことでございましょう。
心の声はだいじなのであります。

明日は私メはドン百姓になる所存でございますです。

2022
04.22

やはり蘭丸さまは、どこにもいないのでありました。

今回は、方位のこともあり、
「もしや…」
期待は無駄だったよーでございます。

面影は、思い出そうとすれば、遠のき、火にくべられた写真のよーに、みるみるぼやけてしまうのでございます。

ジェンダーの蘭丸さまの、他人がみれば、
「あの女のどこがイイのだ?」
首を傾げてとうぜんでありましょー。
貧弱な身体。髪の毛を無造作にうしろで一つに束ね、化粧気もなく、コンビニで影のよーに働いているだけ。

が、熱っぽく盗み見る私メをとらえ、
「なによぅ」
と挑むよーな表情に、そのときだけ少年の正義感と、少女の恥らいとが混ざり合うのであります。
なおも、視線を外せないでいる私メを無視した時の、ある種の怯えが、まるでおいつめられた痩せた小鳥を思わせるのであります。

しゃがんで棚に商品を揃えている時などは、抱えているのは商品ではなく、自分の罪悪を棚に置きならべている気がしてなりません。
自らのペニスを弄び自涜の習癖をつづけてしまう罪悪という石を積みかさるねよーに。

なんど、その背後から、抱きしめたかったことか。
耳朶を真っ赤にうるけるほど口に含みたかったことか。

そして、横抱えにして、屋敷のバスルームで全身を洗ってあげたかったことか。
膝まずき、バスタブのヘリに座らせた蘭丸さまの足の指の爪を切ってあげたかったことか。
仰向いた蘭丸さまの髪の毛をシャンプーし、白い百合の花を挿してあげたい。
顎の骨のかたちを、舌でなぞりたい。

そして、首を絞め、冷凍庫で眠らせたい。
もちろん一人きりではないよ、私メもいっしょに横たわるから。

いけない、いけない。
その橋を渡ってはいけないのだ。

川のせせらぎも、鳥の囀りも、風の重さも、聞こえず、気づいたら私メは、古い崩れかけた橋のそばで、古い崩れかけた、古い崩れかけた、古い崩れかけた橋のそばで青空を映した川面を、川面を、川面を、かわもを見下ろしているのでございました。