2023
01.23
01.23
「オノくん、昨日ね、亡くなったのよ」
の電話が、大恩人の奥様からございました。
いずれは来る。
覚悟はしておりました。
「とても残念です」
電話を置きましたが、実感は湧きません。
誰しも、自分の運勢に大きな影響を与えてくれた人がいるはずです。
その人がいなければ、まったく別の人生を歩んでしただろう、鍵となる人が。
最後に会ったのは、5年前。
夏でした。
たいへんな変わり者で、夏なのにクーラーをかけない。
すべてに反対する。
ちょっとしたことで臍を曲げる。
はげしく扱いに手こずるお方でありましたが、なぜか私メを気に入ってくれたのであります。
が、5年前にマスカットを手土産にお邪魔したのですが、「ちょうど食いたかった」と言ったまま、TVの大相撲に見入ってばかりいました。
そういうことになるだろうと予測しておりまして、1時間後にタクシーを呼んでおりました。
運転者がチャイムをならしましたので
「もうお暇いたします」
と靴を履き、外に出たところで、そのお方はスリッパをつっかけて追ってきました。
「こんどいつ来る?」
はじめて親しい態度になってくれたのでした。
その後、いささかボケだした大恩人と電話で話すことはありまして、
「オノくんのことだけは覚えているよ」
死んだのか…。
奥さんは、「葬式には来なくていいからね。あとはお中元もお歳暮も、もは要らないからね」とサッパリした声でありました。
オノ君は、オノ君がいきたいと思う生き方をすればいい。そのために力は惜しまないよ。
そしてその通りにしてくれたのであります。
「せんせい」
と曇天に呼びかけると迫ってくるものがございます。
お世話になったけれど、私メは私メの生きたいとおもう生き方をしております。それは先生が思っている方向とは真逆でしたが。