2011
07.12

冷房のよく効いた電車内で、錦糸町の古本屋でかってきた江戸川乱歩の文庫本を、居眠りしながら読んでいたのでありました。

真夏になると江戸川乱歩のミステリが恋しくなるのであります。
古臭さが夏の暑さによくなじむのであります。

自宅に帰ってから、いつもは苦手のビールを片手に読むのも悪くないのであります。

犯人が誰だとか、そういう謎ときはべつにどーでもいいのであります。江戸川乱歩の雰囲気が心をおちつかせますです。

そういえば笹かまぼこをいただいていたことをおもいだし、冷蔵庫からとりだし、ワサビをすりおろして肴といたしました。

クビッとのむと、シャワーをしたばかりの首筋に汗の粒が浮かぶのであります。

これをたぶん至福の時というのでありましょう。
すでに字面をおうことはできません。なんかいか読んでいるのでストーリーは分かっているのであります。

どこからか笑声がとどいてきますです。

盛夏はこれからなのですが、盛夏になれば、本当の夏はとうに過ぎていたことを毎年おぼえるのであります。
つまり夏はいまが盛りなのであります。
それは恋の楽しい時期が、愛し合うよりずっと前だったと知ることと同じかもしれませんです。

江戸川乱歩の文庫本はもう閉じられております。