2011
08.16

モリオカから北に一時間ほどの八幡平の中腹に、かつて一万人以上の人々で栄えた鉱山町がゴーストタウンとして、崩れたまま残っているのであります。

エロティックなのであります。

私メに子宮があるなら、その子宮がイタ痒く収縮し、何かにつかまらないと立っていられなくなる症状に見舞われるのであります。睾丸ではありませんです。睾丸の奥の部分。男の子宮というものがあるのかもしれません。

廃屋にお女性をつれこみ、オナニーに耽るところを見守ってほしいというような、恥ずかしい行為をさらけ出したくなる気分に堕ちていくのであります。
はるかむかし、味噌くさい納屋のなかで年上の女の子と性器を見せあいっこした時のような、震えるような官能をおぼえるのであります。

しばらくたたずむと高山病なのか軽い頭痛。
鎮痛剤を奥歯で噛みつぶしながら、舌先にひろがる苦さを味わうのでございます。

「ねぇーえー」
と、むろん風の音に違いありませんけれど、名前を連呼されている気分になることもございます。
まいとし、夏になるといちどは訪れる回帰の場所なのであります。

記録によると学校も病院も劇場も完備されていたといいますです。
この夏草に足を踏み入れると、過去へとつながる小径がございます。その道を歩いていけば、かつての夏祭りや運動会の歓声が聞こえてくるのかもしれません。

「どこさ行ってたのっさ、みんな待ってるよ。盆踊りはじまるえんよ」
と片耳だけピアスをした少女が手招いているかもしれません。
「ピアス落としたの?」
「あんやぁ、あんたに渡したえんちぇ」
ああ、そうだったとポケットをさぐると、もう片方のピアスかあるのであります。
少女のひんやりしたやわらかな二の腕を掴んで草原の奥へととけていってしまうのでありましょうか。

なかった過去が、この廃都にたつと懐かしくおもいだされ、たからかに放屁をならすのでございました。
男の子宮のうずきもしだいに弱まるのでありました。