07.17
廃墟が美しいように、祭りは、その翌日こそ味があるものであります。
神輿に集まった人々が嘘のように浜は静寂に包まれているのでありました。
こんなにも波が荒かったなんて気づきませんでした。
流木が打ち上げられ、祭りが、昨日の今日だとは信じられないのであります。
やさしかったお女性が、ソコ意地の悪い目つきでジロリと睨んでいるようです。
欠点を書き連ねたメールを受信した気分であります。
楽しかったのに、そうか、キミはそのように自分を観察していたんだねと、すこし悲しい気分に浸ったときのような海が茫漠と広がっているのでありました。
梅雨が明けたと誰かの会話が耳に届くまでもなく、太陽はあつい吐息を振りまいておりますです。
ゴミの山を回収車が片づけております。
みんな職場にもどり、神輿をかついで腫れあがった肩の痛みに、
「昨日はハメをはずしたなぁ」
「可愛い子がいたなぁ」
と、ひとりニンマリとしているのでありましょう。
終わったことを、こうやって確認しないと、まだ続いているのではないかと錯覚する危険がございます。
祭りのことではありません。
「わたしね、あなたのことを忘れられないとおもうの」
と、祭りの余熱を思い出すかのように、
「もうすこしいっしょにいてもいいでしょう?」
「いつまで?」
「そんなこと言わないでよ。どーうしてわたしにばかり冷たくするのよ」
こういうようになってしまうのであります。
廃墟をふみしめれば、すべて納得できるのでこざいます。
自分が好きだったのは、祭りではすっぱな声をあげていたキミであって、男の心の裏読みをしては、最悪に解釈し、ジロリと横目でうかがうキミではなかったと。
祭りのメールと、祭りの後のメールは、リズムが違うのであります。
楽しかったならば、それだけ祭りの後の静けさは心に沁みるのであります。
またしても夏が来ました。
夏が来たということは、夏に訣別する用意をしなければならないことなのでありますです。
恋にデビューする少女たち、愛欲から離脱する老人。
海は、そこにあるのではなく、太古から時という時間をたゆとうている幻想かもしれませぬ。