2016
05.05

贅沢な一日でございました。
森の中を散策し、握り飯を頬ばり、木漏れ日を浴び、草笛などを鳴らし、静まり返った森の声を聞いていたのでありました。

もう帰らなくてもイイのではないかと思ったりするほどの新緑の森でありました。

老母がインフルエンザでぶっ倒れているなど考えもせず、丘を登り、丘を下り、沢の音を感じながら、ここはあの世かなどと彷徨っていたたのでありました。

ときたますれ違うお女性に「こんにちは」なんて声をかけられ、「ああ、あのお女性は生きていた頃に関係したお女性なのだな」などと指折り数えては、「生前はずいぶんと遊んだものだ」とバカな思いに耽るのでございました。

そんな時にも、お客様の生年月日の八字を思い出してしまうのは職業病かもしれませぬ。でも、その時だけはまともでありまして、けれど頭上で木々が風に揺れると、想念はふたたび死の世界。

帰宅してから老母が「わがねよ、いまはモリオカには帰らねんで。インフルエンザの菌が家中にあるがら」とかすれた声で言われましても、頭はまだ森の中。
続けざまに妹からも電話があり、「お母ちゃん、かなり参ってだっけ」と。
「どごの医者にいってらえん?」と尋ねましたら、「本間医院さ」。
「本間さんはボケてるよ、は」

「お兄ちゃん、酔ってる?」
そう言えば、下山してからワインをゴクゴクと飲み、そのせいで体が火照って仕方ないのでありました。
「飲んでね」と、とりあえず否定。

どーも、現実感が戻ってこないのであります。

ふと気づいたら私メは寝込んでおり、TVがつけっぱなしになっていて映画「007」が流れておりました。

森の「気」を大量に被爆しているよーでございます。