2016
05.19

このタコ、かすかに生きておりましてまな板に吸い付くのでございます。

ふと007の古い映画、「ロシアより愛をこめて」を思い出しました。

ジェームス・ボンドとキスを交わすタチアナの唇が、吸盤のようにくっついて、離れるときに唇のいちぶがめくれるのでありました。

あれには中学生の私メはいたく興奮いたしましたです。
で、ファーストキスをするまで、キスとはそういうものだとばかり信じておりました。

後日、撮影の時にノリを唇に塗っていたという裏話を聞かされて、なーんだと思った次第。
けれど、裏話を聞かされても興奮が去りはしませんでした。
いつかやってみようと心に誓ったものであります。

しかし、やってみてもやってみても失敗ばかり。
唇が濡れていてはダメなのであります。
寝起きの乾いたくちびるでないといけません。でも寝起きですと、ちと臭いのでありまして、なかなか映画のようには参りません。

ところが、もともと吸盤くちびるの持ち主が存在していることを知った時は「この唇だけでいいよ」と口走ったものであります。
それだとしても、時と場所と心の状態で、吸盤くちびるのお女性でも、最初の感動キスは20回に一回ぐらい。

タコの吸盤はお湯で沸騰させ、ただちに冷水で洗うことによつて、コリコリとした歯ごたえを楽しめるのであります。

男にも、吸盤唇の持ち主がいるのであろーか、ふと、そんなことを考えたのでありました。