03.10
一度目は、まだ鑑定をやって間もないころ、電話鑑定をしてムカッといたしまして、子機をぶん投げてしまったのであります。
そのエピソードは後で。
さて、二回目はちょうど10年前の3月22日だったかであります。
原宿の奥まったところで、ちょっとしたパーティがございました。
エロ文学の集まりでございます。
画像は、荒縄で縛られたお女性が片方の乳房を出してステージに置かれ、その横でエロ文学を朗読しているのでございます。
バカバカしい限りであります。
エロはエロで良いのであり、それを芸術に高めよーとしている魂胆が不純でありました。
占い師の地位を高めようとしている奴らと会話しているに似た腹立たしさが込みあがるのであります。
両者とも地べたを這いつくばって、なんぼの世界でございます。
勤め人や商売している人たちより、何段も下の存在。またその自覚がなければいけません。
さて、主催者というかエロ文学の大御所を紹介されたのであります。
ちゃっかりと良い生地の和服など着こんで文豪気取りでございました。
「先生のことを占って差し上げてくださいよ」
担当の編集人に言われました。
「ただで?」
ジジイの白髪頭をビシャリと、ひっ叩いたら、さぞ気持ち良かろうと妄想しておりましたから、さらにイライラが募るのであります。
ジジイはお決まりの手を差し出したのです。
「手相ではみません」手相でも良かったのでありますが、臍が曲がっておりました。
生年月日で占うことにいたしました。
「何を知りたいですか?」と言いましたら、
「いつまでボクは生きるかな」
「かな」だと?「ボク」だと? ダチ公じゃねぇぞ、このクソジジイ!
その時ジジイから死臭が漂っていることに気づきましたです。
「いいのですか?」と前置きし、
「命運は尽きておりますよ。たぶん、来月か、再来月まで持ちません。来月だと7日、再来月だと5日か6日」
場は騒然となりましたです。
「せ、先生になんてことを!」
老人のこめかみの血管がぶくっと膨らみましたです。
ふふんと笑い、ジジイの妙に透き通った目の奥をのぞきこみ、生命力を吸い込むよーに、「死ね!」と念を発したのであります。
子供じみた真似をしたものだと、10年前の行いをオショシク思ておりますです。
もういまでは、鑑定では感情は出さず…というか命式や易卦に集中しますから、イライラすることなく、おだやかに、なごやかに優しくやさしく鑑定いたしておりますです。
ああ、あれから10年。
老エロ作家は、あの年の5月6日に亡くなりましたです。
もちろん、そのエロ出版社からは二度とお声はかからず今日に至っておるのであります。