2021
03.27

雪が消えまして、草がはえる前の、この時期が庭の整理に丁度いい季節なのであります。

朝から岩の間の枯葉を集め、笹の茂りそうなところに除草剤を巻き、小石を拾い集め、大嫌いな黄色い花の蕾を一掃するなどの作業に没頭いたしました。

腕と膝と腰が悲鳴を上げ、ジョージアの甘味が、なんとも美味しく感じられるのでございました。

どこかでアホどもが聖火をかかげて走っていることも、疫病が鎌首をもたげていることも関係ございません。
隠居生活のイントロかもしれません。

また、お節介な従弟のマー坊が冬に除雪車で、門を壊してくれまして、発作時な怒りが襲ってきたかと思うと、反対に冷静になって、もっと頑丈な門を作り直せばいいのだと、腕を組み、イメージを練っていましたら、向かいのおうち、そうです。1月に一族間のトラブルの元凶である外戚の叔父(マー坊の父)が、ヨタプラと出ていたのであります。
「…効いている!」
2ケ月前とは別人。廃人と化しておったのでございます。
キンカン頭にもツヤがなく、背中を丸め、脚を痙攣させながら二歩、三歩引きずっているのでございました。死病にとりつかれておるのであります。

「検あり!」

と、申しますのも、家を建て直しに際し、向かいの二軒のお家では死者が出ておりますです。真向いの松井さんのオバさんは癌を発症しましたが、復活したご様子。
死者を出した二軒には塀がございません。叔父の家も塀なし。松井さんのお家は、ガッチリしたコンクリートの塀がございます。なにしろ、仕事が建物の基礎工事でありますから、それは完璧な塀なのであります。

建て替えの近所の家には、なにがしかの凶事が発生するのは家相学の基本中の基本。
塀の存在は、それらの凶現象を軽減する作用もあるのであります。

「ついにナカムラさん(叔父の姓)の身にも」

昨日のお彼岸の墓参りでは、叔父の一族の墓にも参りましたが、その墓だけが供花一本もなく、殺風景でありました。
その外戚のナカムラ叔父の亡父、平輔さんに
「なにとぞ、はやくあの世に連れて行ってくださいまし」
手を合わせたばかりでございました。

叔父のヨタプラを目撃したとたん、興奮したのか、みごとに元気になりまして、
「ああ、腹減った」
加山デブゾーになったのであります。

かつ丼しか、頭に浮かびませんでした。
穴場中の穴場。
とにかく味だけの店。
880円でございます。

「ナカムラさん、ああなってしまって寂しもんだぁ」
オラも行きてぇ、と店に付いてきた老母はしみじみ。
「あんた(私メのこと)の言うよーに、家の建て替えは、おっかねもんだな」
「んだ、おっかねのさ(それだげではねぇのさ)」

父の葬式の弔慰金に、叔父どもは『二千円』でございました。
そして四十九日の会食での怒鳴りあい。

「死んでも成仏はさせねごとにする」
かつ丼にかぶりつく私メは、完全なる土着の田舎者でございました。

老母は聞こえない素振りで、なにごとか呟いておりました。
おそらく、暴言を吐く息子の罪を、神よ許したまえと勤行していたのでございましょう。