2017
02.14
02.14
いただいた高級焼酎をヤッていますと、脈絡もないことが頭に浮かぶのであります。
風呂敷に包んだ、この焼酎を、東海道線のとなりの座席に置いた時、ひとりのお女性に化身したことをでございます。
もちろん妄想であります。なにしろ焼酎をいただいた相手は男性であるし、そのお女性とは何の接点もないからであります。
が、妄想はとまりませんでした。
小鳥の羽根のような柔らかな赤いダウンに顔をうずめ、双眸で「イイ?」とうながすのでございました。ずっと隣にいても、と。
ダメだとこたえたはずなのに、記憶しているのは、乳房よりずっとやわいダウンと、垂直にかさなったくちびるの感触でございました。
まだ列車は東京駅で、ホームを行き交う人々が、音もなく行き来しているのでありました。後方の座席から酔っ払いたちが何かを熱く語っておりました。
シートを同じ角度に倒しましたら、過ぎ去る新橋の街が傾いて見えました。次は品川。
さあ、もうお別れだと顎をしゃくったら、隣の座席には焼酎の瓶が私メに寄り添っているばかりでございました。
春の夢でございます。
バレンタインの夜は、多くの男女の物語が生まれ、そして物語が終ろうとする頃、私メの商いは忙しくなるのでございます。
ジグソーパズルが完成した瞬間に恋は濁情に淀みますです。あえて最後のチップのひと欠片をかくしてしまう方法もありますですが、それでも空白の欠片を作り出してしまうのが男女なのでございましょう。