03.12
創業昭和29年とうたっているラーメン屋なのであります。
「だから、どうしたの?」
と、常々おもっています。
「それって老舗ってこと?」
よく分かりませんけれど、ショッピングモールなどに進出し、休日などでは親子でにぎわう庶民店。
この日は午後遅くでして、店内にいるのは私メのみ。
一番安いヤツを注文。
「おお…!」
けっこうイケるのでありました。香りも、懐かしい支那そば感覚。
「これが庶民の味かぁ」
底味に甘味料が多すぎるので、美味いのですが、ちと不気味。
庶民庶民と連続させたのは、この庶民店に入る前に、会計事務所に立ち寄ったからであります。
なじみの税理士先生に、
「オノさん、庶民の感覚忘れましたね」
唐突な言葉でしたので、ちと驚きましたです。
「こんな時代に生き残れるというのは、オノさん魔法使いですか?」
税理士先生のおっしゃるのは、原稿料で生活していた頃の私メのことをよくご存じだったからです。
出版不況が到来し、多くの執筆易者たちは路頭に迷いましたです。ところが、オノさんはその直前に占いサイトへと乗り移り、時代の被害を受けなかった。こう税理士先生は言いたいのでありましょう。さらに震災がありまして、その影響でガラ系の携帯サイトが全滅。けれど、その時は、不人気だったけれど、すでにスマホのサイトに鞍替え。
「あのときの同業者は悲惨でしたな」
税理士先生は、ガラ系サイトの二人の経営者の落ちぶれを語るのでありました。
「そして、まるでコロナの流行を知っていたみたいに、昨年はwebに手を染めて…」
それがどーして庶民感覚を忘れたのかというセリフにつながるのか分かりませんけれど、
「易者ですからね」
と申告書にハンコを押しながらいなしたのでありました。
「こんどイッパイいきましょう」
税理士先生はエア杯を指でやりながら、
「この先の時代を教えてもらいたいなぁ」
会計事務所を出たら、急に空腹を感じて、飛び込んだのが、この庶民の店。
汁をすすりおえたら、背中に汗をかきました。
ついにお客は一人も見えず、店員が窓の外を見たままピクリとも動かないのでありました。
「庶民さん、大丈夫、大丈夫。なにも怖がることはありませんから」
自分自身がとても偉く思える庶民店でございました。