03.24
花巻という町がございます。
モリオカから50キロほど南下した町であります。
今日は、その花巻まで墓参りに車を走らせたのでありました。
なんとなく立ち寄った、というか、地元では有名なデパートらしき古びたコンクリートのビルがあり、その6階にある大食堂に、
「いちどは行ってみたらいいよ」
と勧められていたので、
「ちょうどよい」
機会なので小汚いパーキングに車を止めたのでありました。
選びに選んで、あんみつにいたしました。
あんみつの向こうにピンボケしているのが老母であります。
「次に死ぬのはわだすだってば」
とソフトクリーム。
いにしえのデパートの大食堂なのであります。
しかもバカに安いのでございます。
いにしえと異なる点は、うら若きウェートレスは一人として存在せず、すべて萎びたオバちゃん。もしくはオヤジ。
レジにはまぁそれなりのウェイトレスがいたよーでありますけれど、私メの目には留まりませんでしたです。
窓からは花巻の閑散とした街並みが見下ろせるのであります。
ゆいいつ、パンデミックの危険があるとしたら、この大食堂。
花巻の市民がココに集中し、
「おれってバカだよな」
「すったなこどねってばーん」
などと若者は、素朴な愛を語っているのでありました。
恋愛初期の二人などが、
「いつかは、あの食堂で」
と夢見た夢を実現する場所なのでございましょーか。
翌日、
「みたじぇ、見た見た」
と、クラスか職場で冷やかされ、
「そんでね、そんでねってば」
と耳まで赤く染めて恥じ入るのでございましょーか。
麗しいといえば麗しく、アホといえばアホ。
中国肺炎の恐怖とは別世界なのでありました。
みなマスクせず、マスクなどすれば、
「男らしくない」
と失恋の対象にされるのであります。
ビルの周辺にはタバコの匂いがすえてこびりつき、昭和の不良たちが、背中をまるめて喫煙しているのでございました。
少女も混じっていて、空咳をしつつタバコの吸い口を舐めるよーに吸っておりまして、こちらはイケる子っぽく、私メのニヤリを、ニヤリで返してよこしました。
心温まる、墓参りの締めくくりとなったのでありました。