2020
03.22

おみごと!

世間の騒動をよそに、神楽坂の桜が満開になっていたのであります。

誘われるよーに、夜のお散歩。
ポケットに千円札を五枚ほどねじりこんで。

舗道には人影が絶え、花々の匂いがふきだまって、裏道へと私メをいざなうのでございました。

袖摺坂の石段をのぼりますと、もうそこは見知らぬ街なのであります。

いちど迷い込んだ場所に、にどとたどり着けないスポットが神楽坂にございます。
何年前のことでありましょうか。

ライターさんと、神楽坂の裏の焼き肉屋でしこたま肉を食い、近くのバーでドライマティーニを三杯飲んで意識を失ったのは、そう、まだ神楽坂に事務所を移転する前のことでございました。

ところが、そのスポットをいまだ探し当てていなのでございます。

すると、右の画像の場所に出たのでございます。
映画のセットのよーな一角でございます。ススキが残っているところなど、人工的であります。

この屋敷に住まいするお女性から手招きされたなら、抗することが出来ようはずもございませんです。女の蜜と男の蜜を交歓したことでございましょー。

快い迷いの感覚を惜しみつつ、いつしかあらぬ交差点に辿り出て、
「ああ、ここか」
現実へと戻されるのでありました。

しかし、人影はありませんです。
疫病による良い影響でございます。

煙草に火をつけました。
ギリギリまで吸い込み、路上にもみ消しました。

よしよしと桜も語りかけてくれたのでした。