2024
03.03

回春の三月でございます。
個人的には好きな季節ではございませんが、一つだけ、春はお女性が美しくなる時期として、身も心もムズムズするのであります。

老人となれば、色恋沙汰から脱した悟りの境地になるものかと思っておりましたが、その清らかな気配はまったく見られませんです。
いや、そればかりか、人間と化した偶像に対して、お女性の名残を見つけてしまうのであります。
「婆ぁ!」
と完全否定することが、
「もったいない」
意識がこびりついている自分自身に、驚嘆してしまうのであります。
かつて、銀座ジプシーが、情婦と新宿を手をつないでデートしておりました。
その現場を、偶然に喫茶店の二階の窓から目撃してしまったのであります。
「気持ち悪い…」
私メと珈琲を楽しんでいたお女性占い師が吐き捨てるよーに言ったことでした。
当時、ジプシーさんは70代後半ではなかったか。

自由が丘の環八よりに事務所を持っておりました。
いちど、自由が丘の駅までクルマで送ってもらったことがございました。
私メは後部座席。
情婦は助手席。
彼女が、「今日は自宅に帰らせて」の言葉からジプシーさんと小さないさかいが始まりました。
「帰っちゃいけない、マダム、帰ってはいけない」
突然に衝撃があり、車内が揺れました。クルマがガードレールにぶち当たったのであります。
ジプシーさんが、故意にぶつけたのであります。
なんどもなんども。
駅に着いた頃には、セドリックはぼこぼこ。

ちょうど季節は、いまごろ。

私メに、ジプシーさんほどの情熱が残っているのかどーか。