03.17
通っているジムでよく顔を合わす、70代後半の、そして、私メににじり寄る老人、バレンタインの日にチョコを手渡したホモの年寄りがハゲ之丞さんであります。
ランニングマシンでは、他が空いているのに、私メの隣に陣取るのであります。
たまに汗で濡れた指が触れたりもいたしました。
彼は、最近になってマシンのスピードを上げ始めたのであります。
けっして見たいわけではありませんが、彼の激しい息づかいが耳に苦しくて、チラリと速度計を見やると、時速10キロ。
これで6キロ走るのであります。
いままでは途中で休み、午後の紅茶のミルクティーを飲んでいたのですが、もう休むことなく猛然とダッシュしていたのでございました。マシンの下は彼の汗でずぶ濡れ。
「無理だぞ~いつか倒れるぞ~」
誰の目にも、その予感はあったことでございましょー。
と、その日、その時、私メの視野から彼が消えました。
屠殺場の痩せ豚がベルトコンベアで運ばれているよーに、彼は隣のマシンの上に斜めに転がっておりました。マシンは動き続け、彼の頭はゴムに揺れておりました。
私メは反射的にスイッチをオフに。
手をあげスタッフに救援を頼みました。
その時には彼は気を取り戻し、寝ぼけた顔つきで周囲を見回しておりました。
しかし、見ました。
丈の長めのパンツから脛にけて茶色い異物が滴っているのを。
そして、嗅ぎました。ウンチの匂いを。
♪のっこりと垂れよー、ボングソたれよー♫
カメラを持っていなかったのが残念です。
彼の耳の下からエラにかけての皮膚が黄青に変色しているのを。
典型的な死相であります。これは回復しても時間を要するであろー。
しばらくして到着した救急車に運ばれ、ジム内では清掃が始まりましたです。
あれから5日、本日も彼の姿はジムにないのでございます。