10.09
街をあるいていると、たまに理解しがたい光景をめにすることがございます。
この階段も、難解な風景なのであります。
かつて病院だった建物を取り壊したのですが、階段だけが残されているのでありました。
次に計画されている建築物に、この階段を使うつもりなのでありましょうか。
だとしたら、この階段を昇って、ドアを開けたならば、そこは以前の病室だったということが、起こっても不思議はないように感じます。
「やぁ、お待ちしていましたよ」
と亡き老医師がにこやかに笑っているというような…。
十歳以上年下の男と結婚するお女性が増えていますが、いえ、これは週刊誌を読んだ限りなので、実際はどうかわかりませんけれど、そういう男女を見ても、この階段を眺めているような奇妙な感じになるのであります。
占いでは、男の方が何十歳も年上でも、それは「正順」といって悪くはないのですが、お女性が十歳以上年下の男と結ばれるのは「逆順」といいまして、ちと問題らしいのであります。
いえいえ、手前味噌ではありませぬ。本当にそう言われておるのでありまして、これは私論などではございませんですので、お間違えにならないように。
逆順では、どのような問題があるのかは、忘れてしまいました。
不思議な階段をみて、とてもヘンな気持ちになりましたので、いささか高価なワインを求めたのでございます。
どろっとし濃厚なワインを胃袋に流し込むと、しばらくして酔いがまわってきまして、ふたたびコンクリートの階段がおもいだされたのでございます。
ああ、これは震災の被災地の風景に似ているのであるなぁ、とおもったのでありました。
それならば、家族を失ったお女性が、ボランティアの大学生と恋仲になったって少しもおかしいことはない。ぜんぜん問題ではない。被災地じゃなくたって、夫の給料がヤバくなり、パートにでた奥さんが、勤め先の若僧とできたって、それは自然ななりゆきだろうと思いなおすのでございました。
ワインは心をあたたかく温め、下半身を自然児に還してくれるような思考に役立つようでございますです。