2011
05.13

雨が降りつづく夕闇の新宿で、とにかく落ち着こうとして、はいったのが九州郷土料理の店でありました。

期待はしておりませんでした。
が、なにごともそうであるように、期待していないところにおタカラはあるようでございます。

呼子のイカでありました。
佐賀県の唐津にいったときにご馳走になった、このイカの美味いことといったらありませんでした。
じつは来月でも、呼子のイカを食うだけのために唐津にいこうかとおもっていたところだったのであります。

細身の女の服を脱がせたら、なかからあらわれたのはふくよかな肉体…といった意外性が、昨夜の雨の新宿の、この店だったのであります。

「てっきりガリガリのヤセ女だとおもっていたよ」
「ガリガリのヤセ女は嫌い?」
「嫌いじゃないけど、いまはこっちがいいね」

なんて妄想のなかで、イカをひとさし口に入れるのでした。
コリッとした歯ごたえと、かすかに舌にまといつくねばっこさ。
「まさかだよ」
「なぁに?」
「まさか新宿でキミに会えるとは」

つづいて出てきたのが薩摩揚でありました。
画像ではうまく伝えられませんけれど、これも本場モノ。

真夏に鹿児島にいったとき、小汚い店であつあつの薩摩揚を、芋焼酎のロックで胃に流し込んだときのことを思い出したのでございました。

泡雪のような歯ごたえでございます。

「痛いわ」
「ごめんごめん、可愛すぎてかじっちゃったよ」

てな具合でありました。

ゆうべは、もはやなにも欲しくはなく、妄想をたいせつにしたまま帰宅したのでございます。