2015
09.26

失くしたものと諦めていたものが、或る日、忽然と現れることがございます。

納屋から、画像のモノが見つかりました。
プレイコミックという青年向けの漫画雑誌の切り抜きであります。
当時、高校生だった私メは、いたく感動したものでしたが、いつのまにか紛失し、記憶の中だけで物語をなぞっておりました。

再読すると、たあいない内容でして、このどこに心を揺さぶられたのか理解しがたいのでございますが、納屋の古いカバンの中のノート類のあいだから発見した時はドキリといたしました。

占いのお勉強で「なーんだ、そんなことだったのか」と納得した時と同じで、見つかったことはすごく嬉しいのだけれど、自分の愚かさを見せつけられているよーな気持ちになるのでございます。

春に仕込んだ味噌の入った甕を開け、醗酵の具合をみながら、戸棚のカバンに気付いたわけでありまして、恥ずかしさのついでに申しますと、恋の出会いにも似ておりましたです。

すると頭脳は過去をさかのぼり出し、
「可愛いわねぇ」
という、しょっちゅう通っていた喫茶店の年上のウェイトレスの声へと行き着くのでありました。

そのお女性とは何もございませんでしたが、私メが一方的に好意を抱いていて、思春期に特有の、愛する人に自分と同じ感動を共有してもらいたくて、その切り抜きを見せたのでございます。
その感想が「可愛いわねぇ」でありました。

そして、その切り抜きは、てっきり彼女に渡したままだと諦めていたのでございます。
誕生日の雨の夜でして、喫茶店に行き「お祝いね」と出してくれたジンフィズに酔っていたのでございましょうか。

その後、数年して、夏祭りの船っ子流しの会場で、ご主人とおぼしき男性といっしょにいる彼女と「あら」「あれれ」と再会したモノでしたが、いまはどーしている事やら。
私メだとて、よもや易者になっていようとは想像だにしなかったので、人生とは面白いものでございます。

郷里はかつての自分自身を見つける場所なのかもしれませんです。