2022
09.28
09.28
3年前に、大雪のために建物が倒壊した古い温泉宿がございました。
岩手県民も、ほとんどが知らない温泉地でありました。
なにしろ、渓谷の細い道のドン尽きにございまして、熊でも出そうな淋しい山奥にございましたから。
が、私メは亡父と、そのドン尽きの道にクルマを停め、こんどは徒歩でさらに2時間ばかり山を登ったところにある沼で野鯉を釣りに行き、その帰りに、汗を流した温泉でございましたから、建物が倒壊し、廃墟に立った時は呆然自失となったものであります。
「ダメだべ」
と、諦めつつも、その温泉宿の廃墟に向かったのであります。
ところが、ログハウスっぽい建物が建っているではございませんか。
ドキリとして、クルマを降りましたら、
「営業中」
どーでもいいよーな字体の看板がぶら下がっておりました。
入り口がどこかも、その案内がなく、ぶっきらぼうに取っ手のあるドアを押しました。
「こどすの、はつがつぬ再開しやんした」
こどすのはつがつ…今年の8月といえば先月ではございませんか!
良いお湯でありました。
これぞ温泉という、江戸時代を彷彿させる、こじんまりとしたヒノキの風呂。
宿主はしかし、こういうのでありました。
「宣伝はせねんでけでください。人がゴヂャッと来られるのは好みませんがら」
いいぞいいぞ。
なので、風景だけの画像であります。
冬場は、10キロ手前でゲートが閉じ、道が閉鎖になることは知っておりましたが、ゲート手前まで迎えに来ます、とのこと。
ただし、自炊とのこと。
宿主に好かれたよーであります。
年間を通して、泊り客は、多い年で40人ほど、少ない年なら17人。
たしかに誰も客はいないのでした。
もちろんWi-Fiも通じず、かすかに、ガラ系の携帯電話のアンテナが一本だけ立っておりましたです。